まちを知る、城を知る、京都を知る展覧会
「京都―洛中洛外図と障壁画の美」
歩いているだけでも長く息づく伝統を感じられる町、京都。この京都の400年前の姿を東京にいながら体感し、思索を深めることができる展覧会が上野の東京国立博物館で開催されています。
その名は「特別展『京都―洛中洛外図と障壁画の美』」。
サブタイトルのとおり、この展覧会の目玉は洛中洛外図と障壁画。
とても簡単にまとめると、京都の街を空高い視点から見おろして描いた風俗画。そして、その画面に登場する二条城などの内部の様子を鑑賞できる展覧会なのです。
重要文化財 「洛中洛外図屏風 舟木本」(部分) 岩佐又兵衛筆 江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵
その愉快に踊っている様子などは、実物はもちろんのこと、会場に入ってすぐの巨大な高精細画像(4X4メートルのスクリーン4基に拡大投影)でご覧いただけます。
昔の京都の様子がわかる!
国宝&重要文化財の『洛中洛外図屏風』7件を一挙公開!
重要文化財 「洛中洛外図屏風 舟木本」(部分) 岩佐又兵衛筆 江戸時
代・17世紀 東京国立博物館蔵
つまり洛中洛外図とは、京都の市中(洛中)と郊外(洛外)の様子を描いたもの。室町時代から江戸時代を通して数多く制作され、高いところから見下ろす構図(鳥瞰)が特長です。
京都が舞台ですから、その絵のなかにはお寺や御所などの名所が盛りだくさん! さらに四季の移り変わりや、人々のイキイキとした姿が描かれています。こちらの絵は先ほどと同じく「洛中洛外図(舟木本)」の一部分。当時の祇園祭の模様が色鮮やかに描かれています。
天狗のお面をつけたり、笛を吹いたり、軽快なステップを踏んだり、ひとりずつ全く違うポーズ、表情をしているのだから面白い。屏風全体にわたって、濃密な世界が繰り広げられています。
展覧会では、この舟木本(以前の持ち主が舟木さんだったことから舟木本と呼ばれています)はもちろんのこと、国宝と重要文化財に指定されている7件を揃って展示。とくに、狩野永徳の描いた「洛中洛外図屏風 上杉本」(国宝・11月4日まで展示)は舟木本と双璧をなすもの。美しい金雲のあしらいの合間に垣間見える京都の家々、人々、ランドマークは圧巻です。
ちなみに、上杉本は1550~1560年(天文~永禄年間)の頃の京都。舟木本は1615年(慶長20年頃)の京都を描いたとされています。
この50年以上の時間の変遷あいだに、絵のスタイルだけではなく、権力者のいる場所、人々の価値観や大切にしているものも変わってきます。じつは、ここも見どころ。同じ京都の絵であっても描かれているお寺や、大々的に取り上げる場所が変わってきたりするのです。
浮世絵の生みの親と言われている岩佐又兵衛と、狩野派を代表する永徳の絵を見比べるだけでなく、「京都のどこのあたりを描いているのか(描いていないのか)」、「屏風の中心には何が書かれているのか」という視点でチェックしてみるのも面白いです。
京都のお寺や御所にはなにがある?
龍安寺の襖絵がNYから里帰り&二条城からの障壁画を展示
そしてもう一つの目玉が障壁画。障壁画とは、襖や壁などに描かれた室内画の総称。写真の二条城のように、空間の雰囲気を醸しだすとても大切な役割を持っています。
京都展では、この二条城を飾る障壁画を、ただガラスケースのなかに平面的に並べるのではなく、実際の御殿の配置を生かしながら展示。二条城の空間の再現も試みています。
また、明治時代に行われた廃仏毀釈(はいぶつきしゃく・仏教と神道をきちんと分離すること)のあおりで、アメリカなどに散逸してしまった龍安寺の襖絵18面が約80年ぶりに揃い、公開されています。
今回の展覧会は、ふだん観光で出かけても見られない京都を覗くことができるすばらしい機会です。また、巨大スクリーンを活用し「洛中洛外図屏風 舟木本」の細部を映しだしたり、四季折々で表情を変える龍安寺の石庭を4K映像で鑑賞できるなど、新しい技術が展示に調和した形で取り入れられていることも特長。時間をかけて、たっぷり鑑賞したい展覧会です。
特別展 「京都―洛中洛外図と障壁画の美」 について
展覧会名称:特別展 「京都―洛中洛外図と障壁画の美」会場:東京国立博物館
会期:2013年10月8日(火)~12月1日(日)
※会期中展示替えあり
開館時間:9:30~17:00 金曜日と11月2日(土)、11月3日(日)は20:00まで、11月4日(月・休)は18:00まで、(入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日
※ただし、11月4日(月・休)は開館し、11月5日(火)は休館
特設サイト:http://www.ntv.co.jp/kyoto2013/