カーペット・絨毯・ラグ/カーペットができるまで

カーペットのものづくり(製織編)

前回の「カーペットのものづくり(ウール紡績編)」に引き続き、今回は、カーペットの生産工程を紙面工場見学という形でご紹介します。カーペットのものづくりにも日本ならではの、技術力、きめこまかい配慮がされています。ぜひご覧ください。

堀田 将矢

執筆者:堀田 将矢

カーペット・絨毯ガイド

前回の「カーペットのものづくり(ウール紡績編)」に引き続き、今回は「ウィルトン」という織物カーペットの工程をご紹介します。

長い長い前段取り

カーペットの生産は、糸が工場に入ってきてすぐに織れるわけではなく、非常に長い前段取りがあって、初めて製織がはじまります。

一番最初に織機の全貌をご紹介しておきます。巾10m、長さ15mほどもある大きな織機です。この織機で、ホテルのカーペットや、住宅に使われているカーペットが生産されています。
ウィルトン織機

ウィルトン織機(巾およそ10m、長さ15mほどの大きな織機です)

それでは、工場見学に参りましょう。

ウール紡績編の記事でご紹介した紡績、撚糸、染色という工程を経て、「かせ」と呼ばれる糸の固まりがカーペットの工場に入荷されてきます。
かせ

かせ(一つのかたまりでおおよそ4kg、カーペットにするとわずか2平方メートル程度しかありません)


この「かせ」のままではカーペットの生産はできず、一番最初の工程「ワインダー」という工程に入っていきます。
ワインダーとは簡単にいうと、くるくると「木管」と呼ばれる芯に糸を巻き上げて、「コマ」をつくっていきます。この「コマ」は少なくとも1200本、多い場合にには6000本も準備をするのが、ワインダー工程になります。
木管

木管(木製の15cm程度の長さの棒に溝が掘られています。この溝がなければ糸が滑ってしまいます)

ワインダー

ワインダー(糸を木管に巻き上げています)

コマ

コマ(1袋あたりおよそ60個程度のコマが入っています。この袋を最低でも20袋分準備します)

まだまだ前段取りは続きます。
今度はこの「コマ」を織機の後ろ側にある「クリール」というところに一つ一つ手作業でつけていきます。前に織った時の糸が残っているため、糸に新しい「コマ」を結んでいきます。前でご説明したように、最低でも1200個の「コマ」がありますので、それをすべてつけていきます。生産している途中に結んだ箇所がほどけないように、丁寧に結んでいく必要があり、すべての「コマ」を交換するのにおよそ20時間程度かかります。

クリール

クリール(製織するために必要な糸をつける場所です。全部で6000箇所あります)

コマ替え

コマ替え(一つ一つ手作業で交換していきます)

この他にも、生産しやすくするために、「シズ」と呼ばれるおもりを調整したり、「地」や「シメ」というカーペットの表面には出てこない糸の段取り、様々な前段取りがあり、実際に生産をはじめるまでにおよそ2週間程度かけて準備を進めていきます。

次のページでは、いよいよ実際に織る様子をご紹介します。
 

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