FJ1600から続く入門フォーミュラ

「スーパーFJ」の直接のルーツになっているのが、スバル製1600ccエンジンを搭載したフォーミュラカー「FJ1600」である。エンジンパーツの生産が終了したことから、それを引き継ぐ形でホンダ製1500ccエンジンを搭載した「スーパーFJ」が誕生したのだが、かつての「FJ1600」は80年代から90年代にかけたF1ブームに後押しされ、多くの若者が参戦した登竜門レースになった。
FJ1600

FJ1600。前後ウイングなど空力パーツを装着していないのも特徴。


今では考えられないが、特に90年代前半の「FJ1600」には100台を越えるエントリーを集める時もあり、レースに出場するだけでも至難の業といえるほど競争が激しかった時代がある。当時の人気レース漫画『F(エフ)』では主人公の赤木軍馬がFJ1600からレースを始め、F3、F3000、そしてF1へとステップアップしていく姿が描かれた。これが当時のセオリーであり、レースを夢見た若者達は18歳で自動車免許を取得すると一目散にレーシングガレージへと駆け込んだ。そして、寝る間を惜しんで昼夜問わず働き、食うものも食わずして稼いだお金を全てレース活動の資金に充てた。当時、こういう苦労を重ねて挑戦する若手たちは「FJボーイズ」と呼ばれ、熱狂的なレースファンたちが実力で出世していく若者達を応援していた。まさに「F1を目指す甲子園」的な雰囲気があったといえる。

実際に「FJ1600」からF1まで登りつめた選手も居る。その代表が片山右京(92年F1デビュー)、野田英樹(94年F1デビュー)らである。その後も小暮卓史(スーパーフォーミュラ参戦)らのドライバーがFJ1600からF1を目指したが、片山、野田の世代以降はFJ1600出身者でF1のレギュラーシートを勝ち取ったドライバーは居ない。
FJ

FJ1600


その理由のひとつに、レーシングカート出身者の台頭がある。18歳で免許を取る前からレースを経験している少年たちがFJ1600をすっ飛ばして、いきなりF4、F3などのレースに参戦するようになった。さらに、自動車メーカーがバックアップするレーシングスクールがカート出身者の受け皿となり、充実したカリキュラムを提供してフォーミュラの経験を積ませる役割を担うようになった。そのトレンドに乗り遅れまいと、レーサーを志すのが遅かった世代もいきなりレーシングスクールに入校するようになり、FJ1600は徐々に若手の登竜門という位置づけから外れていってしまった。


再び注目を集めるFJ

「FJ1600」を引き継いで2007年からはじまった「スーパーFJ」。FJ1600の隆盛復活をと期待されていたが、こういった時代や環境の変化もあり、残念ながら著しく参加台数が増加するという結果には至っていない。
小林

16歳でフォーミュラレースに出場した小林可夢偉。レーシングカート時代からその名は有名だった。写真はフォーミュラトヨタ時代。
【写真提供:Toyota Motorsport】


ここ10年来のF1を目指すセオリーは、「幼少の時からレーシングカート」→「レーシングカートのトップカテゴリー参戦」→「レーシングスクール入校(フォーミュラを学ぶ)」→「スカラシップ獲得」→「カーボンモノコックシャシーのフォーミュラレース参戦(FCJ、海外のフォーミュラルノーなど)」→「F3参戦」→「海外のGP2などミドルフォーミュラレースに参戦」→「F1」というステップアップが最も理想的な形となっている。自動車メーカーの強力なバックアップと資金提供無しには理想的なステップアップは難しいが、小林可夢偉はまさにこのルートを通ってF1に辿り着いた。

このセオリールートの中に「スーパーFJ」は存在しない。しかし、ここ数年、「スーパーFJ」にはレーシングカートで有名なティーンたちが出場するようになった。なぜ彼らが「スーパーFJ」に目を向け、参戦するのか。その背景には、可夢偉の例とは違う時代の変化がある。
スーパーFJ

スーパーFJ (ミスト)


「スーパーFJ」に出場するティーンの何人かはレーシングスクールの現役の受講生である。レーシングスクールで彼らはベテランドライバーの指導を受けて走ることができるが、コースが空いている日を活用してレッスンが行われるため、サーキットを走れる時間は決して多いとは言えない。スクールの視点に立ってみれば、教えることはごく僅か。あとは才能を見いだし、伸ばし、誰にスカラシップを与えるかを決めるのがスクールの本当の目的であるので当然だ。限られたレッスン走行日だけでは物足りず、カートとは異なるフォーミュラの動き、クルマの動きを学ぶために彼らは「スーパーFJ」に挑戦している。仮にメーカーからスカラシップに選ばれたとしても、今は上位カテゴリーに行けば行くほど走り込むチャンスは少なくなるので、彼らはスクール生でありながら、ライバルを出し抜くためにできることを実行しているのである。そういう意味では「スーパーFJ」はこれまでとは違った形で若手の登竜門としての役割を担うかもしれない。

次のページでは「スーパーFJ」F1日本GP前座戦の見所をご紹介する。