男の子育て/ワークライフバランス・男の育児休暇

「子どもは社会の宝」の本当の意味

動物だって植物だって、その一生は、次世代に命をつなぐために最適化されています。いかに確実に生き残り、子を産み、育てるか。そのために生物は進化してきました。つまり、子どもを産み、育てることは、生物としての営みのメインストリームであるわけです。生き延びて、子どもを産み、育てるために、日々の糧を求めてさまよう、つまり仕事をするのであって、仕事は本来のメインストリームではありません。

執筆者:おおた としまさ

成果主義がもたらすアンバランス

成果主義の落とし穴

成果主義の落とし穴

人類がまだ狩猟採集生活をしていたころ。マンモスを狩って生活していたような、原始時代を想像してください。

ある部族でマンモスを狩りに出かけました。部族全体の存続をかけた大事業です。ある、もう盛りを過ぎた子だくさんの男性は、豊富な経験からマンモスのいそうな場所をかぎ当てました。同じく盛りを過ぎた子煩悩な男性は狩人たちから逃れようとするマンモスをうまく足止めしました。チームワークでマンモスを追い詰めました。そして最後、筋骨隆々で部族の若い女性からもモテモテの、今最高に脂ののっている独身男性が、勇敢にマンモス飛び乗り、最後の一撃を食らわし、巨大なマンモスは轟音を立てて地面に倒れました。

男たちは巨大なマンモスに祈りを捧げ、その場で解体し、家族の待つ村まで肉を担いで帰りました。村には腹を空かせた女・子ども・老人が待っています。

さて、問題です。村が栄えるためにはマンモスの肉を各家族にどんな風に配分するのがいいでしょうか。

  1. 一番の活躍をした若い男性にその「成果実力」に見合うだけの大量の肉を渡し、マンモスを足止めしたり、肉を解体したりしただけの地味な仕事しかしなかった男たちには少量の肉しか渡さない。
  2. 狩りでの功績に関係なく、家族の人数に従って肉を分配する。子どもがたくさんいる家族には、堅くて美味しくはないけれど、食べ応えのあるおしりの肉を大量に渡す。老人のいる家庭には柔らかくて栄養価の高い内臓を渡す。ど派手な活躍をした若者には、美味しい肉を一人分渡す。ついでに“食べられないが、腐ることなく永遠に名誉の証しとなる”牙をそっくりそのまま渡す。若者はそれを名誉として独り身の家の前に飾る。

1. の方法では、若者が食べきれないほどの肉を得て、それを目当てに集まる若い女性に子どもを産ませるくらいのことはできても、そのほかの子どもたちは育たず、村は滅んでしまいます。2. の方法なら、若者の名誉は保たれ、村全体としても繁栄することができそうです。若者は頼れるリーダーとなり、村人たちも彼を慕うでしょう。

子どもは部族を存続するための宝です。社会全体にとっての大事な宝物を育てている価値を評価されず、狩りの場での活躍だけを評価されていれば、社会的アンバランスが生じます。それが今の社会に起きている状況ではないかと思います。
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