王道少年マンガキャラの「うしお」と封じ込められていた妖怪「とら」
■作品名うしおととら
■作者名
藤田和日郎
■巻数
全33巻+外伝1巻
■おすすめの理由
週刊少年サンデーに90年から96年まで掲載されたマンガです。
古いお寺に住む少年、蒼月潮が蔵の中で「獣の槍」と封じ込められていた妖怪「とら」と出会ったことから、妖怪と人間の長き宿命の戦いに巻き込まれていくストーリー。
このレビューを書くために久しぶりに読み直したのですが、やっぱりおもしろかったです。
主人公は真っ直ぐで自己犠牲を厭わない正義感の持ち主。ちょっと青臭さが残る王道少年マンガキャラです。相棒は妖怪で、隙あらばうしおを食べようとする油断ならない相手ですが、気が付けば「ふたりで一体」の最強のコンビになります。人間とバケモノの友情?!物語もこのマンガのいい持ち味になっています。また、出てくる女の子たちも元気で強い!特殊能力がなくても、勇気と行動力で目の前の危機に対処できることを身をもって示してくれます。
獣の槍とは何か、とらとは何者か、うしおの父親はなにを隠しているのか? などはじめから沢山の謎が提示されていますが、この謎はうしおと一緒に旅をしていく中で徐々に明らかにされていきます。連載しながらストーリーを組み上げていく手法をとることの多い少年マンガの中で、これは初めからエンディングを設定したうえで書き進められているように思われます。一気読みしても設定に齟齬がなく、すべてのエピソードがラストに収束していくように作られているので読んでいて気持ちがいいです。
あと『うしおととら』のもう一つのお楽しみといえば、コミックス巻末のおバカなクイズコーナー。このころのサンデーコミックスは空きページに広告を入れるのが通例だったと思いますが、『うしおととら』では読者サービスに費やされます。涙なくしては読めなかった話のあとにパロディ的なコーナーを見せられるというギャップがものすごいです。
妖怪が人間を襲うシーンがあるので、血しぶきや手足がもげるなど残虐描写は多いです。でも自分とは異なる種族を受け入れるとか、人と人(または妖怪)との絆が希望につながる、などいいテーマが込められた作品なので、ぜひとも小・中学生に読んでほしいと思います。