リングの元となりJホラーのエッセンスが詰まった作品 『女優霊』
■監督中田秀夫
■主演
柳ユーレイ
■DVD販売元
バンダイビジュアル
■あらすじ
新人映画監督の村井はデビュー作の製作中、テストフィルムの中に紛れた未現像のフィルムを見付ける。そこには村井が小学生の頃テレビで1度だけ観たことがある名前が思い出せないホラー映画がなぜか映り込んでいた。
奇妙な胸騒ぎを感じつつ撮影は順調に進んでいった。ある日、村井はロケバスの窓越しに、例のフィルムの中で女優の背後に写っていた髪の長い女性を見つけ恐怖を覚える。それをきっかけに村井の周りで次々と奇妙な出来事が起こり……。
■おすすめの理由
日本のホラー映画史において90年代は輝かしい特別な時代でした。
いわゆるJホラーの誕生です。
Jホラーはハリウッドやヨーロッパ、他のアジア諸国とも、またそれ以前の日本のホラー作品とも異質なテイストを持った新しいタイプのホラーです。
日本の文化・土壌・価値観に根ざしつつ、感覚的・本能的なレベルで日本的な恐怖のエッセンスを掬い取り、現代風にアレンジされた一群の作品は大ブームを巻き起こし、世界的にも認知される様になりました。
本作は、その旗手の一人にして、初期のJホラーで最も有名かつ重要な『リング』を手がけた中田秀夫監督のホラーデビュー作です。
作品の魅力として挙げられるのは、初期Jホラーの本質的な要素がぎっしり入っている点です。
そのいくつかの特徴は
- 本来そこにあるはずのないものが存在する恐怖
- 白い服、髪の長い女性の様な何かがじわじわ迫ってくるが、人ではない
- 恐怖が起きるシーンは直接描かれずその前後が強調される
- 誰が狙われているのかはっきりしない
- 霊の様なものの正体が最後まで分からない
本作、実は評価が真っ二つに分かれます。
もの凄く怖いと感じる方がいる一方、怖さのポイントがさっぱり、という方もいます。
これは新しいタイプの作品故、物語としてはこなれてなくしかもエッセンスのみなので、そこを敏感に感じるかどうかで評価が分かれたということだと思います。
そこで本作の問題点をしっかり修正し、世に送り出したのが『リング』だった訳です。
こういう理由で、リング・Jホラーファンの方にリングの元となった興味深い作品ということでお勧めです。観比べることで見えてくる面白さもあり、ぜひ1度ご鑑賞を。