ホテル/東京のホテル

『変態・変化』をコンセプトにした六本木ホテルS

2012年10月、六本木と西麻布の中間地点「ニシロク」に誕生したホテル&レジデンス六本木。シマダハウスが築33年の既存ビルをリノベーション。施設内はホテル、住居、レストランが融合したつくりになっています。そこで今回はホテル棟の部分「六本木ホテルS」についてご紹介します。『変態・変化(メタモルフォーゼ)』をコンセプトに持つホテルは、まさに驚きの連続でした!

村上 実

執筆者:村上 実

ホテルガイド

築33年の複合用途施設が、
新たな都市生活の場として再生

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「ホテル&レジデンス六本木」は、六本木通り沿いに建つ築33年の施設をリノベーションした複合施設です。既存の躯体は変更せずに、仕上げる範囲の切り替えによって複合用途の建築の再編を行なった結果、長らく廃墟状態にあった建物に新たな命が芽生えました。

生まれ変わった建物は、1階がフロント及びホテルレストラン、2~6階がホテル客室、7~10階がレジデンス、11~14階がスタジオサービスアパートメントとなっています。「ホテルに暮らす」 「ホテルでオフィス」 「ホテルでスタジオ」という発想で、それぞれのフロアがつくられているのが特徴です。ホテルレストラン「ココノマ」のほか、テナントは鉄板焼き「獅子丸」、カフェ&パブ「Virgin café & Pub House」、寿司店「細小魚」、オーガニックグリル「PLATE」。西麻布と六本木の中間地帯「ニシロク」を訪れるハイセンスな客層を意識したラインナップとなっています。

建築家が女性のために作った、小さなおウチのような客室
「フォーキューブ」

ホテルの客室は全47室。「空中庭園」 「禅」 「漣」 「凛」など、11タイプの客室がそろっています。どれも非常に癖のある、独創的なお部屋ばかりです。そこで今回は2タイプをご紹介します。実際に筆者がホテルのインスペクターの視点で捉えたポイントとは。
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2~6階にある客室「フォーキューブ」は、建築家・伊藤博之氏(O.F.D.A associates)が女性のために作った小さなおウチのようなお部屋。お部屋名の由来は、リビング、デスク、ベッド、バスをそれぞれ区切っていることから、「フォーキューブ」と名付けられたそうです。

防犯を意識したカードキーのドアを開けると、木目のパーテーションが目に映ります。このパーテーションがリビングとデスクの境界線。リビングには女性を意識した丸いテーブルに、アクセントカラーに緑を使用したイス。まずお部屋に入ってイスに腰をかけて一呼吸。そのような光景が目に浮かびます。デスクは気持ちがリフレッシュできるようにと、木のぬくもりが感じられる木目調を採用。デスクの広さもお化粧道具を広げる女性には嬉しいですね。ちなみに冷蔵庫以外にも、デスクの右手にはミニキッチンと電子レンジが付いているのもポイントです。

ベッドに行くには足下に注意が必要です。ほかのホテルにはない、ちょっとした段差があります。しかし、この段差がまたポイント。リビングから靴を脱いでベッドに入るというシーンを演出します。靴を脱ぐことで気持ちが落ち着く方も多いのではないでしょうか。近年はレディースフロアの誕生で、このお部屋と同じように女性を意識して小上がりタイプのベッドを採用するホテルが増えています。ホワイトを基調とした清潔感あふれるバスルームには、レインシャワーとオーガニック・ソープセットを完備。心身ともにキレイになるためのアメニティも充実しています。
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一方、「漣」は和のコンセプトを客室内の随所に表現した客室。バスルームは大きめのバスタブに多機能シャワー、クオリティを伝えてくれる各種のアメニティなど、風呂好きにはたまらない空間に。リラクゼーションを徹底的に追求したホテルの熱意が伝わります。リビングは、落ち着いたカラースキムのロングチェアを中心に、コンパクトかつ機能的にまとまられています。現在単行本を執筆中の筆者としても、構想を広げるのにうってつけな落ち着きとクリエイティブさを兼ね備えた空間です。そして究極のベッドコーナー。上質なリネンのシーツは肌に心地よい感覚を伝えてくれます。ダブルサイズなので、その寝心地はまさに夢の世界に誘ってくれるステージという表現が適切かもしれません。

「箸で食べるワインダイニング」

さて、次はパブリックスペースの紹介を。「箸で食べるワインダイニング」をコンセプトにつくられた、ディナーや朝食会場となるシーズンダイニング「ココノマ」。イタリアンをベースに和のテイストを加えた、シェフ自慢の料理の数々。フードとワインの素敵なマリアージュの世界を味わうことができます。

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内装に目を向けると、至るところに匠の技術が施されていました。能舞台など、日本人が古くから意匠的に優れた空間として大切にしてきた間が「九間」。ココノマの空間もこの「九間」をベースとしているために、えもいわれぬ心地よさが感じられるのです。壁面の漆喰は日本を代表する左官職人の久住 有生氏に依頼。小上がりの漆喰は一般の方も参加してつくられたそうで、荒削りな仕上がりが素朴さを感じさせます。カフェスペースの広い壁面は植物で覆われ、森や草原の中にいるような気持ちになります。ダイニング中央の土の球体には植物のオブジェが飾られ、季節の移ろいを感じさせてくれます。

可能な限り、ゲストに「NO」と言わないサービス

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ココノマで、「このホテルは凄い!」と感じる出来事が。それは、スタッフとシェフの対応力。ディナーの際、ワインダイニングにないメニューを注文すると、嫌な顔ひとつせずに提供してくださいました。1度対応してもらえるとついつい調子に乗りたくなるのが人情で、立て続けに無茶なお願いをしてしまったのですが、そのたびにエスプリを効かせた言葉で快く引き受けてくださり、実力に裏打ちされたフレキシブルな対応はまさに見事の一言。

このように可能な限りゲストに「NO」と言わないサービスを、このホテルでは実践しています。もちろん中にはできないこともあります。そのときはスタッフがセカンドベストとなる提案を行ないます。スタッフ、シェフともに、ほかのホテルにはないホスピタリティーとアドリブの聞いたコミュニケーションが図れるのが魅力。久々にスタッフの対応力、シェフの技量ともに満点をつけたいと思うほどでした。

大人のアジトとも言える隠し部屋

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13階には一般のホテルにはない、なんとも独創的な空間があります。それは「メンバーズサロン」。レンタルスペースとしても使用できるサロンは、ニシロクの雰囲気にぴったり。1階にあるラボを含め、すべての空間がスタジオとしてレンタル利用可能。会議、プレゼン、パーティー、料理教室、セミナー、上映会、展示会、ファッションショー、撮影会、ラジオ放送、ライブ配信等、ゲストのニーズにあった場所と使い方ができます。ミニキッチン、バスルーム、洗濯機まで揃い、まさに「遊びを知るオトナのための都会のアジト」と言えるでしょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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