アメリカの哲学者、エマーソンは「人は見ようとするものしか見ない」という言葉を残しています。
ちょっと専門的な言葉になりますが、<類似性>といって、人は自分に似ている人に親しみを感じる傾向があります。反対に<相補性>といって、自分にはないものに魅力を感じ、良好な関係が生まれることもあります。人と人が出会ったとき、<類似性>や<相補性>がないと親しみや魅力を感じにくいため、人間関係は始まる前に決まっていることもあるのです。
ビジネスでは、「この人と一緒に仕事をしたい」と思ってもらえるような状況を作り上げていくことが最も重要なことかもしれません。そのため、自分を固定しすぎず、相手の状況や変化に応じて、<類似性>や<相補性>を演出することも必要になってくるでしょう。
共感に必要な類似性、憧れを育む相補性
<類似性>や<相補性>は相互の関係から生まれるので、簡単な法則を導き出すのは容易ではありません。しかし、苦手な色からコンプレックスを克服する自己分析の方法をご紹介しましたので、ここからは、自分と相手の関係をとらえ、<類似性>や<相補性>を演出する方法をお教えしましょう。<類似性>や<相補性>を演出するためには、まず相手をよく観察する必要があります。生活態度や話し方も重要ですが、外見の色づかいは内面を雄弁に物語ります。
ドブネズミルックは一色ではない!?
例えば、「ドブネズミルック」は、一昔前の日本のビジネスマンに見られた外見づくりの特徴です。灰色が象徴する単調な毎日に、従順であることをよしとする価値観が感じられるのではないでしょうか。しかし、ひとくちに灰色といってもチャコールグレーのような濃い色もあれば、ブルーグレーのような色みを感じる灰色もあります。無頓着に選んだ色かもしれませんし、こだわり抜いて選んだ色かもしれません。外見の色づかいには、コンプレックスや優越感などその人の価値観が隠されていますので、注目して観察することが大切です。色づかいの傾向を読み解くだけでなく、外見の色選びに重きを置くかどうかも、見極めが肝心です。プレゼンや商談など、複数人を相手にする場合は、決定権を持っている重要人物に的を絞るとよいでしょう。