東京マラソンに端を発したランニング・ブームで、皇居周辺などを走る若いランナーの姿は、もはや風物詩となっている。ところがその反面、マラソン初心者やダイエット目的で始めた女性が陥りがちなケガや体調不良の事例が語られるようになってきた。走る=健康、ではないのか? ランニング・ブームに隠れた事実をオールアバウト「ジョギング・マラソン」ガイドの谷中博史氏に聞いてみた。
まずは、昨今のランニング・ブームを同氏はどう評価しているのか?
「結構なことです。東京マラソン(2007年)以前には、家の近くをランニング、短パンで走っていると、奇人、変人のように見られたものです。それが少しずつ“市民権”を得て来た。朝でも晩でも走っている人を見ても、不審に思う人はもういないでしょうからね」
と現状を歓迎。そして、功と罪を挙げてもらった。功としては、「現代人は運動不足といわれていますが、ランニングはウォーキングの次に手軽にできる運動です。手軽ということで、誰でもできる。トップレベルのランナーと初心者が同じ土俵で勝負できるなんて、この世界しかないでしょう。しかも、生活習慣病には効果的ですからね」と解説。しかし、罪もある。
「デメリットの最悪なものとして、突然死があります。昨年の東京マラソンでタレントの松村邦洋さんが急性心筋梗塞で走行中に倒れました。また、ヒザなどに整形外科的な傷害を起こしがちです。基本的には、無理をする、水分を摂らないなど不注意が原因ですよ」
では、その危険性を回避する意味も込めて、街走りなどでの注意点を挙げてもらおう。
「人間は、走り始めると、どんどん記録がよくなる、能力が上がる、面白い、夢中になるとなりますが、その段階でも体ができていないことが多い。だから、ケガや故障をする。すると走るのをやめてしまう、となるのです。そこで、以下のような注意を頭の中に入れて欲しい。1.徐々に質と量を上げる 2.ウォーミングアップを十分に行う 3.朝よりは夕方がいい 4.交通に気を付ける 5.加害者になり得る、ことです。
1と2は当たり前でしょう。3は決して朝走ることを否定しているわけではないですが、人間は寝ている間に脱水ぎみになるため、水分を摂って走らないと危険だということ。夕方というのは、昼間に体を使うため、ウォーミングアップができ、関節も柔らかくなっているから走るにはいいということです。4は主として車に気を付けろということですが、意外に多いのが歩道の段差につまずいて転倒すること。歩いているわけではなく、走っているので、勢いがつき、大ケガの可能性が高くなります。5について、ランナーがいつも被害者といえば、そうでもないのです。歩行者を勢いよく縫うように走ったりすると、接触して思わぬケガをすることも少なくありません」
楽しく走るには、とにかく無理をせず、十分な準備をして、最低限のルールを守ることが大切だ。
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