相続・相続税/相続税の計算方法

相続税の配偶者控除とは? 計算方法と注意点

配偶者は、実は相続税を支払うことはほとんどありません。これは配偶者控除(配偶者に対する相続税額の軽減)という措置があるからです。ではこの措置は必ず受けられるのでしょうか?いくらまで受けられるのでしょうか?ケースによって異なりますので確認してみましょう。

小野 修

執筆者:小野 修

相続・相続税ガイド

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配偶者には相続税の負担が軽くなる“優遇措置”がある

相続税は、財産を取得した人が取得した割合に応じて支払います。しかし、配偶者が相続税を支払うケースはほとんどありません。これは配偶者控除(配偶者に対する相続税額の軽減)という措置があるからですが、いくつか注意点があります。詳しく解説しましょう。

 
配偶者に対する相続税額の軽減は、夫婦で築き上げた財産に対する配慮

配偶者に対する相続税額の軽減は、夫婦で築き上げた財産に対する配慮

 

配偶者の相続税控除はいくら?

配偶者が相続等により財産を取得した場合、配偶者控除を差し引いた上で相続税額を計算します。配偶者控除には次の2つのうち多いほうの金額が適用されます。

・1億6000万円までの財産の取得額にかかる相続税
・配偶者の法定相続分相当額までの財産の取得額にかかる相続税

言い換えれば、相続財産が上のいずれか多いほうの金額を超えなければ、配偶者に相続税がかからないようになっています。財産形成に長年にわたって協力してきたことへの配慮や、近い将来にまた相続税がかかることなどを考慮したものです。
 

相続税の配偶者軽減と法定相続分の関係は?

実際の民法上の法定相続分と、配偶者に対する相続税額の軽減の計算における法定相続分は異なります。注意点は以下のとおりです。

●事実婚の配偶者は軽減措置の対象外
配偶者とは婚姻の届出をしている人に限られます。事実婚、つまり内縁関係の配偶者には法定相続分はなく、この軽減措置を受けることはできません。

●相続放棄をしても配偶者の法定相続分は変わらない
配偶者が相続放棄した場合、民法上は法定相続人ではなくなり、次の順位の人が相続人になります。ただ、配偶者に対する相続税額の軽減の計算においては放棄をしなかったものとして考えますので、配偶者の法定相続分に変動はありません。

●遺贈の場合は相続放棄しても軽減措置が受けられる
配偶者が相続を放棄した場合でも、その配偶者が遺贈により取得した財産に対する相続税は、放棄をしなかった場合の法定相続分もしくは1億6000万円までは軽減措置を受けられます。
 

遺産分割協議が申告期限に間に合わない場合は?

配偶者に対する相続税額の軽減は、「配偶者が取得した財産に対するもの」です。遺産分割協議でもめてしまったりして、配偶者が取得することが相続税の申告期限までに決まらない財産には適用されません。

しかし、「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出しておけば、申告期限から3年以内に分割したときは、遡って軽減措置を受けられます。なお3年以内に分割できないやむを得ない事情(調停など)があり、税務署長の承認を受けた場合も、その後分割したときに、遡って軽減措置が受けられます。

また、遺産分割協議中に配偶者が死亡するケースも。他の相続人やその配偶者の相続人によって遺産分割され、配偶者が取得したものとして確定させた財産についても、軽減措置を受けられることになっています。
 

配偶者に対する相続税額の軽減は上限まで受けるべき?

実はこの軽減措置、今回つまり一次相続の相続税が少なくなる一方で、配偶者の相続時、つまり二次相続の相続税が増える副作用があります。

例えば、財産が2億円、相続人が配偶者(固有財産なし)と子が2人の場合で、配偶者が全ての財産を取得したとします。

●平成26年12月31日までの旧税制
一次相続税は380万円で二次相続税は2386万円になりますので、合計2766万円支払うことになります。これに対し、配偶者が8000万円相続した場合は、一次相続税は1140万円と目先は増えますが、二次相続税は100万円で合計1240万円の支払いで済みます。

●平成27年1月1日以降の新税制
一次相続税は540万円で二次相続税は3178万円になりますので、合計3718万円支払うことになります。これに対し、配偶者が6000万円相続した場合は、一次相続税は1890万円と目先は増えますが、二次相続税は180万円で合計2070万円の支払いで済みます。

二次相続の時に相続税が支払えるか、一次相続と二次相続トータルでの税額はどうなるかを考えて、配偶者の取得額を決めることも大切です。

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