『迷える四姉妹』で一番伝えたかったことは?
「とにかく読者の人の声が直接聞きたいですね」と、中居真麻さん
中居:女は、どんだけ自由に生きてるんやと。これは夏果のシーンに書いたんですけど、実際に年上の女友達とバーで一緒に飲んでいた時に言われた言葉で「私、思うんや。女って、なんて自由に生きとんやって」。バーテンダーにメモ貸してって、書いてそれを冷蔵庫に貼って、これをテーマに小説を書こうって決めたんです。
柴門:でも、実際のところは不自由に見えるんですよね。
中居:アイロニックに表現してしまうのは私のクセで、不自由に見える女を本当は自由だって言いたかったんです。何があっても大丈夫って。四女の葵もネガティブに書いたんですけど、私のメッセージとしてはポジティブに生きてほしいけど、それをストレートに書くのではなく、葵のような辛い状況にいる人に対して、葵もかなり悲惨な状況だけどまだ頑張れる、だから大丈夫なんだって伝えたくて。さらにこんなネガティブな人もいるんだから自分はまだいける、と思ってほしくて。
柴門:なるほど。でも、葵と彼の温度の低い恋愛にしても、すごくリアリティがありますよね。20代後半、30代の最近のカップルを見ていると、レストランにいてもお互いに会話もしないで、楽しそうにも見えないし。でも、一緒にいる、みたいな。
中居:大事な話も全部LINEですませちゃうとか。そういうのって意識して観察とかされますか?
柴門:普段そんなに外に出ないんですけど、電車やお店の人は自然に目に入りますよね。
中居:つねにインスピレーションって、わくものですか?
柴門:子供が思春期の頃は家にずっといたこともありますし、アイデアって波がありますよね。手が追いつかないほど泉のように湧き出ることもありましたけど、残り少ないマヨネーズをすごい圧力かけて絞るようなこともあるし。
中居:マヨネーズ?
柴門:マヨネーズって容器にもう残ってないと思っても、ギュウギュウ絞れば出てくるもんなんですよ(笑)。それと同じでものすごい圧力をかければ、ちゃんと出てきてくれる。
中居:なるほど(笑)。じゃあ、スランプはありますか?
柴門:しょっちゅうです。連載中は大まかな流れが出来ていても、エピソードが思いつかないこともあります。若い頃は神様と取引もしました。自分を信じて、寝ないで数時間集中していると神様が助けてくれて、答えが降りてくるんです。取引は苦しいから、もうイヤですけど。あと、休んでいるように思える時間でも、自分の中では違う活動をしていたりするので、そういう時間も必要なんですよね。
中居:漫画の場合は展開にもスピード感が求められるし、明確なオチみたいなものが求められるから、そこも小説と違うところですよね。漫画を描いていて一番楽しいと感じるのは、どんな時ですか?
柴門:キャラクターが乗り移って、どんどん動いている時ですね。
中居:私は手書きの時はしんどいけど、それをパソコンで打ち込んで家のプリンターでプリントアウトしている時がめっちゃ楽しいです。
柴門:ちょっと分かりづらい(笑)。最初は手書きなんですか?
中居:はい。それをプリントアウトして初めて読む時が一番楽しいんです。
柴門:それは自分が一番最初の読者だからですね。ある程度、作品を客観視できますよね。パソコンの画面とは違うから、ゲラを見ることで冷静に読むことができますし。
中居:あえてクールダウンを作るって大事だと思います。前は早く早くと書き進めたかったんですけど、今は放っておく時間も作るようにしています。
柴門:夜書いたラブレターを朝読むみたいに。
中居:はい。繰り返し読みます。自分の作品を客観視して読んでいる時には「ここ、気づいてくれるかな?」って、つねに読者の顔が浮かびます。
柴門:反応は気になりますか?
中居:まだこの作品に関しては感想を聞いていないので、何でも言ってほしいし、とにかく読者の人の声が直接聞きたいですね。