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『工場』小山田浩子インタビュー(4ページ目)

「さいしょの1冊」をテーマに話題の本の話を聞きます。第2回のゲストは、小山田浩子さん。初めての単行本『工場』について語っていただきました!

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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生き物に対する偏愛

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小山田浩子さん

――「工場」の次に発表されたのが単行本の最後に収録されている「いこぼれのむし」ですね。

小山田 はい。「工場」が雑誌に掲載されてからすぐにまた書きはじめたんです。断片をいろいろ組み合わせているうちに、奈良さんという会社員の女の人が本人は全然異常だと思ってないのに病気に仕立て上げられる話になっていきました。ただただ職場と合わないだけなんだけど、周りから見るとメンタルに問題がある人になってしまうということを書こうと。

――「工場」にはウやトカゲやヌートリア、「いこぼれのむし」にはイモムシ、もう一作単行本に収録されている「ディスカス忌」には魚が出てきます。小山田さんの生き物に対する偏愛みたいなものを感じたのですが。

小山田 書いているうちになぜか出てくるんです。好きなんでしょうね。植物も好きです。そういえば、小さいころは博物学者になりたかったんですよ。理系じゃないので諦めましたけど。
「いこぼれのむし」に関しては、書いている途中に家の床をイモムシが這っていたことがあって。マンションの5階なのにいつのまに入ることができたのか不思議でした。数日後、今度は私の腕にイモムシがついていたんですよ。家事をしているときに、何かちくちくするなと思って見てみたら、一生懸命這っていて。短期間に2回も遭遇したから、これは小説に出すべきなんだろうと思ったような記憶があります。

――本当に生々しくて気持ち悪いと思いながら、読むのがやめられませんでした。

小山田 女子のドロドロしたところを描いた小説でもあるので、「気持ち悪いですよ」とわかってくださるように冒頭は特に気持ち悪く書きました。

――「ディスカス忌」はどういうきっかけで書いたんですか?

小山田 「いこぼれのむし」の後、しばらく断片を積み重ねるのではなく、あらかじめテーマを決めてから書く方法に挑戦したんですけど、うまくいかなくて。もうだめだと思っているときに、たまたま会社が休みで1日暇なときがあったんです。その少し前に熱帯魚を飼っている夫婦の家に赤ちゃんを見に行ったことを思い出したら、なぜか2時間くらいでばーっと何も考えずに書けてしまった。

――熱帯魚屋に忍び込んで餌を食べていた女の子のエピソードが印象的でした。

小山田 整体に行ったときに、整体師と他のお客さんが世間話をしているのを聞いたことがあったんです。ペット屋に忍び込んでイグアナか何かの餌用の干した魚を食べている子供がいて、どうも貧困家庭の子らしいと。私は本当にあったことか人から聞いたことしか書けない。あまり想像力が豊かじゃないんですよ。

――でも、本当にあったこと全部を書いているわけじゃないですよね。どういうことが小山田さんの感覚に引っかかるんでしょう。

小山田 なんだろう。ある程度はわかるけど、わからない部分もあるものですかね。例えば、食べるものがないから盗むというのはわかるけど、どうしてコンビニじゃなくてペット屋に行くのかがわからない。ペットの餌を食べるのは理解できないけど、魚を干したものと聞くとたぶんおいしんだろうなと思う。そういうことでしょうか。
 

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