骨・筋肉・関節の病気/骨折(疲労骨折・剥離骨折・圧迫骨折)

上腕骨近位端骨折の症状・診断・治療

上腕骨近位端骨折は、上腕骨に直接もしくは間接的に外力が働き受傷します。事故、運動、日常生活の中などでみられます。診断はX線により容易に診断がつきます。治療としては、保存治療と手術治療の2つがあります。予後は比較的良好ですので、早期に専門医を受診してください。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

 上腕骨近位端骨折とは

上腕骨は上腕にある1つの骨です。この骨の肩関節に近い部分で関節を構成している部分を上腕骨近位端と呼びます。この部位の骨折を上腕骨近位端骨折といいます。

図

上腕骨の一部で肩関節を構成している部分が上腕骨近位端です。


転倒して手や肘をついたり、肩をぶつけたり、また直接上腕骨に外力が働き受傷します。事故、運動などで発生します。

上腕骨近位端骨折の年齢、性差

運動、事故などに伴い発生する骨折ですので、あらゆる年齢層に発生します。骨の強度が減少した骨粗鬆症を発症した高齢者に多数の発生がみられます。女性に多い傾向があります。

上腕骨近位端骨折の症状

骨折した部位の腫脹、疼痛、変形、皮下出血などです。また上腕を挙上する運動は不可能となることが多いです。通常初期から激痛となることが多いです。

上腕骨近位端骨折の診断

■単純X線
単純X線写真は放射線被爆量も少なく、費用もわずか。その場で撮影も終了し当日説明を受けられるので、整形外科では必ず施行します。

単純X線像。

          肩関節単純X線像。


上記の写真は肩関節単純X線写真。上腕骨近位端で骨折が認められます。

■CT、MRI
上腕骨の場合ほとんどが単純X線で診断可能です。必要に応じてCT、MRI、血管造影などの検査を追加します。

上腕骨近位端骨折の治療法

上腕骨近位端骨折の治療として保存療法、手術療法の2つの治療法があります。

■保存治療
初期治療として骨折した骨をもとの状態に戻す整復を行い、三角巾などで固定する保存治療をまず行います。整復の状態がよければ、このまま時間をかけて骨折した部位の骨癒合を計ります。長期間の固定、リハビリが必要となりますので、運動、仕事の制限があります。

●鎮痛薬
ボルタレン、ロキソニンなど非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDと省略されます)を用います。
 どちらの薬でも胃潰瘍を合併することがありますので、胃薬、抗潰瘍薬などと一緒に処方されます。


■手術治療
骨片が多数あるもの、骨欠損があるもの、整復した骨片の位置が正常な位置関係にない場合、保存治療で癒合しない場合などが手術の対象となります。金属を使用した固定、人工関節置換術などの手術法があります。

髄内釘

     手術で上腕骨を金属の髄内釘で固定しました。



■抜釘術
骨折が治癒した後に固定具を除去します。抜釘術(ばっていじゅつ)と呼ばれます。


X線。

術後に髄内釘を除去します。骨折部位は治癒しています。




上腕骨近位端骨折の予後

保存療法であっても、手術療法であっても、早期に治療を受ければ、上腕骨近位端骨折の予後は良好です。早期に整形外科専門医を受診してください。
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