ガス壊疽とは……細菌感染で組織が破壊され筋肉などが腐敗する病気
クロストリジウム属と呼ばれる嫌気性菌が原因で起こるガス壊疽。手術や怪我の後、傷口を衛生的に処置することは非常に大切です
ガス壊疽(えそ)とは、細菌によって起こる感染症です。筋肉内・皮膚内に細菌が感染し、組織が破壊され、筋肉などが腐敗してしまいます。細菌が増えることによって二酸化炭素、メタンなどのガスが発生するため「ガス壊疽」と呼ばれています。壊疽が起きることで、皮膚の色が緑黒色に汚くなり、悪臭を放つようになります。
ガス壊疽の原因細菌はクロストリジウム属と呼ばれる嫌気性菌
ガス壊疽の原因となる細菌の多くは「クロストリジウム属」と呼ばれるもの。空気のある所では繁殖せず、空気のない所で繁殖する「嫌気性菌」で、具体的にはウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、ノービイ菌(C. novyi)、スポロゲネス菌(C. sporogenes)、セプチクム菌(C. septicum)などの細菌が原因となります。これらの菌は土壌に存在し、土壌中では「芽胞」と言って熱や乾燥にも強い状態で生き続けることができます。空気のないところでは芽胞から増殖する菌に変化します。これらのガス壊死を起こす菌は人や動物の腸管内にも存在します。ウェルシュ菌は食中毒の原因にもなる菌です。
ガス壊疽の危険因子……手術後や怪我後は注意が必要
ガス壊疽は現代の日本では減っていますが、胆嚢や大腸の手術後や、怪我をした後に発生することがあります。発症の危険因子としては、以下のものが挙げられます。ガス壊疽の症状・潜伏期間・死亡率……痛み・腫れ・大きな水疱・腐敗臭
感染から3日以内に発症することが多く、多くは24時間以内です。感染した部分に痛みが起こります。感染部位は腫れて、色はいったん白っぽくなりますが、次第に赤くなり、褐色、黒緑色になり、大きな水疱が出てきます。皮下にガスが溜まっている状態になります。傷から出てくる浸出液は、腐ったような、いわゆる腐敗臭があります。感染した場所が筋肉に近い場合は「壊死性筋膜炎」が起こります。
細菌の毒素が血液を介して、全身に回るために発汗が起こり、不安感も強くなります。嘔吐、心拍や呼吸が速くなり、皮膚が黄色になる黄疸などの症状が出てきます。血圧が下がるショック状態になり、腎臓の機能が低下する腎不全などになると、致命的になることもあります。
治療しないで放置していると48時間に以内に死に至る可能性があり、腕や足に感染している人でも治療しても約8人に1人は死亡することが報告されています。
ガス壊疽の検査法・診断法……X線検査・CT検査・MRI検査など
まずは、外傷、怪我、手術の有無を確認します。筋肉などのガスを確認するために、X線検査、CT検査、MRI検査が行われます。浸出液や切除した組織などを空気の無い状態で培養し、菌の検出を行います。しかし検査のための培養には時間がかかるため、クロストリジウム属の感染の可能性がある場合は、大量の抗菌薬による治療が優先されます。
ガス壊疽の予防法……怪我や手術の傷口の適切な処置が重要・有効なワクチンはなし
傷の清潔に直せるよう、適切な処置が大切です。-
傷を十分に洗う
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傷から異物や壊死した組織を取り除く
- 感染を予防するために、腹部の手術前、手術中、手術後に抗菌薬の静脈内投与を行う
ガス壊疽を起こすクロストリジウム属に対するワクチンはありません。
ガス壊疽の治療法……抗菌薬の大量投与と壊死部分の除去手術・手足切断も
ペニシリン系抗菌薬を中心とした抗菌薬を大量に投与する治療を行う必要があります。壊死した組織と感染した部分を外科的に除去します。除去というのは、例えば手足の感染なら、場合によっては手足の切断をする必要もあるということです。原因となる細菌は空気のある所で繁殖できないため、酸素を投与する高圧酸素療法も行われることもありますが、設備のある医療機関が限定されます。