非日常的加速+尋常でない安定感をセダンで
湿式多板クラッチを用いたトランスミッション、AMGスピードシフトMCTを採用。燃費重視のC/スポーティなS/さらにシフトタイムを短縮するS+/MTシフトのM、という4つのプログラムモードを備える。S 4マチックの0-100km/h加速は3.6秒
驚かされたのは、馬力というよりも、トルクの太さである。そして、セダンであるという着座位置の高さも、非日常な速さを演出する。
800Nmによって叩きだされる、路面を削り取るような加速が、まずは腰からうえの上半身をバンッと浮きあがらせ、口があんぐりと開く。続いて、着座位置の高さ、つまり、スーパーカーではなくセダンに乗っているはずなのにスーパーカー級の速さに導かれているという事実に、いっそう、興奮する。これは、非日常体験以外の何物でもない。
加えて、電子制御+4WDによる安定感が尋常ではない。けれども、それは決してFR的な動きを抑制する類のものではなく、鼻先の軽さ=前輪をドライバーに預けている感覚、を、きっちりと残しながらの安定感なので、これまで通り、メルセデスAMGらしい高性能FR車のドライブフィールを満喫できるといっていい。
確かに、全体的な走りの印象は、さながら精密サイボーグであった。けれども、同じサイボーグでも、AMGモデルに限っていえば、機械が意志をもっているかのような感覚ではなく、たとえ4WD仕様であっても、ドライバーが歓びを覚えるパートをきっちりと残しておいてくれている。サーキットに持ち込めば、きっと楽しいだろうな、という期待値も十二分に感じられた。
ゆっくり走らせているときのライドフィールも極上だ。特に、アシのセットを柔らかくしたときの心地よさは、ときにノーマルを凌ぐ。AMGライドは、確実に、ノーマルモデルの先駆になっていると言っていい。