小児がんとその治療環境の現状とは?
先日、私は「チャイルド・ケモ・ハウス」を訪問し、その関係者のお話を伺う機会がありました。その詳しい話の前に、まず小児がんという病気と、その治療の現状について書いておきます。この病気は「小児がん」といわれますが、誕生から15歳までの子どもに発症する病気です。白血病や脳腫瘍、骨肉腫、悪性リンパ腫など、様々な症状の総称であるそうです。「小児がん情報ステーション」という専門ホームページによると、「日本では年間に2000~2500人のこどもが新たにがんと診断されているといいます。年間の発生は、こどもの人口約1万人に対し1人の頻度であり、稀な病気」とされています。
近年は新薬の開発や治療法の進歩により、発症したとしても生存するケースも多くなっているそうで、上記サイトでは「70%が治るとされている」と紹介されています。しかし、その一方で、日本の子どもの死亡原因の中で、未だに上位を占めるのがこの小児がんだといいます。
何よりも大変なのが治療や療養のための環境だといわれています。仮に「治る」としても数年に及ぶ長期的な治療が必要なるのですが、その場所は多くの場合、病院となります。小児がんで子どもを亡くされた経験のあるチャイルド・ケモ・ハウス関係者によると、その治療・療養の環境は「まるで牢屋のようだった」といいます。
子ども用ベッドと付き添い人用のベッドでいっぱいとなる狭い病院の一室で、長い闘病の日々を過ごさなければならないからです。また、病院には面会時間にも制限があり、治療のためにがんばっている子どもとの面会もままならないことがあるそうです。
つまり小児がんの治療は、症状を持つ子どもだけでなく、その両親や兄弟にとっても大変なことなのです。治療には抗がん剤などを施されることですが、闘病生活を送る我が子を見て「泣く場所すらない」のが、一般的な治療の環境なのだといいます。
多くの善意が集まり実現した「チャイルド・ケモ・ハウス」
この記事を書いている私自身、「小児がん」という言葉自体は知っていましたが、その実態や発症した子どもたちの治療の実態、家族の想いなどについては全く理解していませんでした。今回、この記事を書くにあたって、「チャイルド・ケモ・ハウス」の関係者のお話を聞き、いくつかのサイトを読んでみましたが、その経験はとにかく壮絶なのです。さて、「チャイルド・ケモ・ハウス」はそうした小児がんの治療環境の質を向上させるために、医療関係者や小児がん患者の子どもの家族、行政、住宅関係者など様々な関係者が協力して設立された施設です。神戸市のポートアイランドの医療施設が集まる場所にあるのですが、その土地は神戸市が無償で提供。さらに総事業費約7億円のうち多くが寄付によってまかなわれています。
寄付には、日本財団の寄付プロジェクト「TOOTH FAIRY(トゥース・フェアリー)」が含まれます。これは同財団が主催・運営し、日本歯科医師会が協賛するもの。全国の歯科さんが私たちの治療に際し取り除く歯科金属から、金や銀などの貴金属を抽出し、それを資金化したものを寄付したといいます。
設計には建築家の手塚貴晴氏・由比氏(手塚建築研究所)があたり、大手ハウスメーカーの積水ハウスが建物の建設資金を寄付し、建物の施工も担当しています。次のページではこの「チャイルド・ケモ・ハウス」についてさらに詳しくご紹介します。