■原油価格の高騰
石油の高騰も電気自動車が社会から必要とされている理由の1つです。財団法人日本エネルギー経済研究所石油情報センターによると、ガソリン1リットルあたりの価格はここ数年高騰してきており、2013年7月の時点で全国平均約150円となりました。2000年以前には100円を下回るガソリンスタンドも存在していたことを考えると、1.5倍以上に価格が跳ね上がっています。
高騰の背景として、特にアメリカ、中国における消費の拡大や投機、2003年のイラク戦争以降続く中東地域の不安定化など様々な要因が絡み合っていました。その後、サブプライムローン問題等を経て石油の価格は少しずつ下落し、2008年9月の金融危機以降は、実体経済の悪化が進むにつれて石油需要が減少し、さらに原油価格は下がりました。しかし、2012年に再び、イラン情勢の緊張と原油市場の投機マネーの流入により価格が高騰するなど、レシプロエンジン車に乗り続ける限り、こうした先の読めない政治的・経済的な理由による負担は免れないと私は考えます。
一方、電気自動車は、現段階では車両の価格は高いですが、燃料費に関してはレシプロエンジン車よりも安価です。長く乗ることができれば、燃料費の価格差から「総支払額」は同じか、それ以下になる可能性があります。
例えば、軽自動車サイズの電気自動車の電費を10km/kWh(1kWhあたりの走行距離が10km)とし、レシプロエンジン車は一般的な燃費を用いて20km/kwh(1km/kwhあたりの走行距離が20km)とします。両者が160km走行するためには、それぞれ16kWhの電力と8kwhのガソリンが必要です。一般的な電気代とガソリン代から計算すると、レシプロエンジン車は約1200円かかるのに対して、深夜電力を使って充電した場合、電気自動車は約160円で済むことが分かります。電気自動車は燃料にかかるコストがレシプロエンジン車のおよそ1/8に抑えられるのです。
各自動車にかかるコスト
このように、今日の自動車産業では、自動車からの排気ガスによる大気汚染や、二酸化炭素による地球温暖化問題が深刻になり、さらに石油などの燃料枯渇問題はガソリン価格の高騰を引き起こし、石油を中心に進んできた自動車産業界の構造が揺らぐ可能性を秘めています。今後は、石油に依存しない、電気自動車の開発が大変大切になってくるでしょう。そして、車中心の社会から、社会中心の自動車を取り巻く、周辺産業の構築が急ピッチで進んで行くのではないでしょうか。