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PISA2009脱ゆとりで学力はV字回復へ(2ページ目)

2004年、日本の学力低下が報道された「PISAショック」以来、低下し続けていた読解力。しかし、PISA2009では見事にV字回復。「脱ゆとり」を掲げて、はや数年。この間の取り組みとともに、PISA2009の結果を検証してみました。

伊藤 敏雄

執筆者:伊藤 敏雄

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読解力の低下が最も深刻

しかし、だからと言って手放しで喜んでいられません。正答率が上がったとは言え、それは学力低下が問題視された頃の水準に戻りつつあるだけだからです。そしてこの間、上海、韓国、香港、シンガポールなど、他のアジアの国・地域に大きく水をあけられてしまいました。

読解力の習熟度レベル別結果を見てみましょう。PISA2003では、文部科学省が「社会生活に支障が出る」と判断するレベル1以下の生徒の割合(レベル1とレベル1未満を合わせた割合)が9.0%→19.0%と倍増しました。これがPISA2009では13.6%とやや減少したものの、それでもPISA2000よりは多く、未だに読解力が十分とは言えない生徒が多いことがわかります。
読解力の習熟度レベル別の結果。2009年はできる子が増えた一方、できない子も多いまま。

読解力の習熟度レベル別の結果。2009年はできる子が増えた一方、できない子も多いまま。

一方で、読解力が高い水準にあるレベル5の割合は、PISA2003が9.7%なのに対して、PISA2009では13.4%と増加しました。読解力上位層の割合が増えていることは喜ばしいことですが、下位層の割合も高いまま。これは裏を返せば、PISA2000と比べて、できる子とできない子の両方が増えた二極化が進んだとも言えます。脱ゆとり教育も、まだまだ課題がありそうです。

学力V字回復の影に「読み書き計算」あり

読み書き計算の他にも、早寝早起きや朝食を食べるといった生活習慣の重要性が再認識されたのもこの時期。

読み書き計算の他にも、早寝早起きや朝食を食べるといった生活習慣の重要性が再認識されたのもこの時期。

実は、PISA2009の被験者は、移行期間も含めると小学校1年生からゆとり教育を受けていた世代。しかしこの世代は、読み書き計算への回帰が起こったのが小学校4年生のころで、遅くともこの時期から読み書き計算を重視することで、学力が回復することが立証されたと言えます。

PISA2009では、学力調査の他にも、読書活動に関する調査も行われており、PISA2000との比較で「読書は、大切な趣味の一つだ」「本の内容について人と話すのが好きだ」といった肯定的な項目に「あてはまる」と答えた割合が増加しています。一方で「本を最後まで読み終えるのは困難だ」「読書は時間の無駄だ」「じっと座って本を読むなど、数分しかできない」といった否定的な項目に「あてはまる」と答えた割合は減少しています。

一方で、学力がどん底だったPISA2006の被験者は、移行期間を含めると小学校4年生からゆとり教育を受けていた世代です。この世代は、百ます計算ブームが起こったのが中学校1年生になってからだったので、学力を回復させるのにはやや手遅れだったのかも知れません。改めて、読み書き計算の重要性を再認識させられましたね。

■脱ゆとり教育までの流れ
2002年:遠山敦子文科相が学力向上をアピールする「学びのすすめ」を発表。
2003年:指導要領一部改訂で「発展的な学習」が可能になる。「百ます計算」ブームが起こる。
2004年:PISA2003結果が発表される。日本の順位低下が報道される(「PISAショック」)。
2005年:発展的内容が書かれた教科書の使用開始。
2007年:43年ぶりに全国学力調査が復活。文科省が「読解力向上プログラム」を発表。PISA2006結果発表、順位は続落。
2009年:新しい学習指導要領(脱ゆとり教育)への移行期間開始。
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