敗血症とは……さまざまな感染症が原因で起こる二次的症状
敗血症は、何らかの感染症が原因となり、全身に炎症が起きてしまった状態です
ただし、血液中または血液を培養した結果に病原体または毒素が見られてなくても、何らかの感染症が原因と疑われていれば、敗血症と言います。
敗血症になると全身に炎症が起こり、その炎症に対する反応として、様々な臓器の機能が低下する「全身性炎症反応症候群」が起きることがあります。感染症が原因となる疾患の中でも、重症な病気と言えます。
敗血症の診断基準は以下の通りです。
- 体温が38.0度より高い高熱または36℃未満の低体温
- 心臓の拍動である心拍数が1分間に90回より多い頻脈
- 呼吸数が1分間に20回より多く、血液中の二酸化炭素の量が少ないこと
- 血液中の白血球の数が1μlあたり、12000個より多くまたは4000個未満あるいはまだ未熟な白血球が10%より多い
よって、何らかの感染症であるという判断が必要ですので、様々な検査、症状によって、感染症を診断する必要があります。感染症の原因を探すことが治療に役立ちます。
意外かもしれませんが、問題になるのは高熱がある場合だけではありません。ショックなどで血液の循環が悪くなれば体温が低下しますので、低体温も問題です。体温が低いからと言って安心できません。
敗血症の症状……高熱あるいは低体温・むくみ・黄疸など様々
主に感染症の症状が起きますが、重篤なものが多いです。上記と重複しますが、- 38℃より高い高熱、悪寒、ふるえ
- 36℃未満の低体温、冷たい皮膚
- 心拍数が1分間に90回より多い頻脈
- 呼吸数が1分間に20回より多い多呼吸、息切れ
- 精神状態の変化、混乱などの意識低下
- 浮腫(むくみ)または体液増加
- 血糖120mg/dlより高い高血糖
- 低血圧
- 低酸素血症
- 尿の量が減少
- 血液が止まりにくい出血傾向
- お腹が張ったり、腸の動きがなくなるイレウス
- 黄疸
- 身体の痛みや不快感
敗血症の検査法
敗血症の場合、血液検査で以下のような所見が見られます。- 白血球が1μlあたり、12000個より多いか4000個未満かまだ未熟な白血球が10%より多く見られます
- CRPという炎症で上昇するタンパク質が2.0mg/dlより高くなります。
- ホルモンの1種であるプロカルシトニンという物質が2.1ng/dlより高くなります
- 炎症で増加するサイトカインと呼ばれるタンパク質であるIL-6が1000pg/mlより高くなります
例えば、上記の数値に加え、クレアチニンという体の老廃物を示す数値が0.5mg/dlより高くなれば、腎不全を疑います。血を止めるために必要な血小板数が1μlあたり10万未満となれば、DIC(播種性血管内凝固症候群)を疑います。黄疸の原因であるビリルビン値が4mg/dlより高く、乳酸が2mmol/lより高くなっていれば、肝臓の機能が低下している肝不全を疑います。
これらが起こるのは、感染症の結果、全身に炎症が起るためです。感染症の原因は病原体ですが、細菌、ウイルス、カビである真菌、原虫、寄生虫など様々です。敗血症を引き起こす原因となりやすいのは、肺炎、尿路感染症、皮膚および腸管の感染症で、主な細菌としては、ブドウ球菌や大腸菌、いくつかの連鎖球菌などが挙げられます。
敗血症の治療法・予防法
敗血症に対しては、起こっている症状に対する対症療法を行います。例えば、低血圧などのショック状態である場合は、輸液と昇圧剤の投与などを行い、腎不全を起こしている場合は人工透析などを行います。重要なのは、元となった感染症の治療で、病原体に対して適切な治療を行うことです。細菌であれば抗菌薬、ウイルスであれば抗ウイルス薬、真菌であれば抗真菌薬、寄生虫には抗寄生虫薬を使用します。さらに、病原体に対する抗菌薬の効果を高めるために、体の免疫力を担う免疫グロブリンを投与することもあります。
敗血症から引き起こされる深刻な病気に、腎不全、DIC(播種性血管内凝固症候群)があります。腎不全になってしまうと、体に老廃物が蓄積し、有害な物質がたまってしまうので、透析が必要になります。DICに対しては、また別の治療が必要です。詳しくは「DIC(播種性血管内凝固症候群)の原因・症状・治療」を参考にしてください
敗血症のリスクは、感染症のリスクとも言えます。65歳以上の高齢者、1歳未満の新生児・乳児、免疫機能が低下していたり、悪性腫瘍や糖尿病や自己免疫性疾患などの病気がある場合は、感染の可能性が高いために、敗血症のリスクも高いです。
敗血症の予防法は、何よりも敗血症を引き起こすような感染症の原因となる病原体に感染しないようにすることです。感染症を防ぐためには、普段から、手洗い、マスク、うがい、規則正しい生活、バランスのよい食事、十分な睡眠に心がけたいものです。ワクチンのある疾患はワクチン接種しておくことも大切です。