被災後の生活のための様々な支援制度を解説
突然の自然災害で家や家族を失ったときの精神的・経済的ダメージは計り知れません。住まいを確保するための給付金、食料や学用品の供給、自然災害で世帯主が死亡した場合の災害弔慰金の支給、税金や社会保険料の優遇など、自然災害で被害を受けた人には様々な公的支援が用意されています。
住まい確保、再建のための「被災者生活再建支援制度」とは?
平成10年5月に「被災者生活再建支援法」が成立して以来、5度の法改正を経て、約25万9000の被災世帯に対して約4352億7090万円(うち2分の1は国庫補助金)の支援金が支給されています(平成30年3月時点)。東日本大震災やその後の大地震の影響も大きく、7年前の235億と比べ支援金の支払いは18倍以上に膨れ上がっています。
自然災害で家が倒壊!そんなときは公的支援が受けられる
被災者生活再建支援制度の支援金の支給額は最高で300万円までです。持ち家の場合、火災保険に加入して地震保険をつけたほうがいいでしょう。なお、基本的に自営業者や小規模法人事業所の事業的資産(倉庫など)は支援金の支給対象になりません。
■被災者生活再建支援制度の対象となる自然災害
暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象(地すべり、山崩れ、がけ崩れ、土地隆起、土地沈降、土石流、火砕流等)により、10世帯以上の住宅が全壊する被害が発生した市区町村における自然災害です。
■被災者生活再建支援金の支給対象
- 居住する住宅が対象となる自然災害で全壊した世帯
- 居住する住宅が半壊しやむなく解体した世帯
- 災害が継続し、長期にわたり居住不可能な状態が見込まれる世帯
- 居住する住宅が半壊し大規模修繕しなければ住宅に居住することが困難であると認められる世帯
住宅の被害認定は、内閣府及び消防庁で決めた災害認定基準により市区町村が行います。住家とは現実に居住のため使用している建物をいい、社会通念上の住家であるかどうかを問いません。
- 住家全壊(全焼・全流出)
住家の延床面積の70%以上が損壊、焼失若しくは流失した程度のもの。または住家の主要な構成要素の経済的被害の割合が50%以上に達した程度のもの - 住家半壊(半焼)
住家の損壊部分がその延床面積の20%以上70%未満のもの、または住家の主要な構成要素の経済的被害の割合が20%以上50%未満のもの - 大規模半壊
住家の損壊部分がその延床面積の50%以上70%未満のもの、または住家の主要な構成要素の経済的被害の割合が40%以上50%未満のものとする。
支給額は基礎支援金と加算支援金の合計額です(最高300万円まで)。使途の限定をしない定額渡し切り方式で支給されます(カッコ内は単身世帯の支援金の額)。
- 基礎支援金
住宅の被害程度に応じて支給する支援金。全壊、解体、長期避難は100(75)万円、大規模半壊は50(37.5)万円 - 加算支援金
住宅の再建方法に応じて支給する支援金。住宅建設・購入は200(150)万円、住宅補修は100(75)万円、賃貸(公営住宅以外)は50(37.5)万円 。住宅解体だけでは加算支援金の対象外
※特定長期避難世帯は、上記の額に70(52.5)万円を上乗せした額とする
※加算支援金のうち複数の条件に該当するときの支援金額は、最も高いほうとする
支援金の支給申請は、基礎支援金は被災した日から13月以内、加算支援金が被災した日から37月以内に市区町村役場にて手続きします。やむを得ない事情による延長は可能です。東日本大震災の被災者生活再建支援金の支給申請期間は、平成31年4月まで延長されている地域も多くあります。
■被災者生活再建支援金の支給申請の手続きに必要なもの
被災者生活再建支援金支給申請書、および以下の書類を用意します。
長期避難世帯として認定された世帯は、り災証明書のかわりに「長期避難世帯に該当する旨の市町村による証明書」が必要です。
り災証明書の発行を受けていない場合、住宅の倒壊が写真で確認できたときは、写真添付も可能です。身の安全が第一ですが、可能なら倒壊住宅を自分で修理、補正する前に現状をそのまま写真に撮るのも有効でしょう。り災証明書は市区町村により書式が違います。市区町村にお問い合わせ下さい。
住宅の建設、購入、補修又は賃借を行ったことを示す契約書等の写しを添付することが原則ですが、住宅建設であれば登記簿謄本や建築確認書の写しなどを代用することも可能です。
なお、り災証明書、登記簿謄本(滅失登記済)など住宅の被害等を証明する書類を添付するため「住宅解体」する場合は、37月以内の申請期間内に行われる必要があります。
■被災者生活再建支援金の支給方法
世帯主本人名義の金融機関(郵便局、農協も可)の口座に振り込まれます。
災害救助法に基づく様々な援助もある
災害により市町村の人口に応じた一定数以上の住家の滅失がある場合、災害救助法による救助を受けることができます。- 避難所、応急仮設住宅の設置
- 食品、飲料水の給与
- 被服、寝具等の給与
- 医療、助産
- 被災者の救出
- 住宅の応急修理
- 教科書など学用品の無償給与
- 埋葬 、死体の捜索及び処理
自然災害で家が倒壊!そんなときは公的支援が受けられる
災害弔慰金、災害障害見舞金の支給も
1市町村で住居が5世帯以上滅失した自然災害では、災害弔慰金や災害障害見舞金が支給されます。■災害弔慰金
市区町村で実施する制度。生計維持者が自然災害で死亡した場合は最高で500万円 、その他の人が死亡した場合は最高で250万円が、死亡した人の配偶者、子、父母、孫、祖父母に支給されます。災害弔慰金に加えて、支給要件に該当すれば遺族年金が支給されるので、年金事務所にも問い合わせましょう。
■災害障害見舞金
市区町村で実施する制度。自然災害により重度の障害(両眼失明、要常時介護、両上肢ひじ関節以上切断等)を受けた場合、生計維持者に最高250万円 、その他の人に最高125万円 が支給されます。災害弔慰金に加えて、支給要件に該当すれば障害年金が支給されるので、年金事務所にも問い合わせましょう。
災害援護資金、生活福祉資金の貸付も
災害援護資金や生活福祉資金の貸付には、家屋の被害を証明する「り災証明書」などが必要です。「り災証明書」は発行する市区町村ごとに違いますので、詳細は市区町村にお問い合わせください■災害援護資金
自然災害(都道府県内で災害救助法が適用された市町村があるとき)で、負傷または住居や家財に大きな被害を受けた人は、350万円まで3年(特別の場合5年)の据え置き期間中は無利子(3年または5年を過ぎると3%)で災害援護資金の貸し付けを受けられます。
東日本大震災では、据え置き期間6年(特別な場合8年)、据え置き期間中無利子(据え置き期間過ぎると1.5%)でした。前年の総所得金額により所得制限があります。詳細は市区町村にお問い合わせください。
■生活福祉資金貸付
主に低所得世帯が支援対象者で、災害援護資金の対象世帯は生活福祉資金貸付の支援の対象から除かれます。緊急小口資金は10万円まで無利息、災害を受けたことによる臨時費用の貸付(福祉費)は150万円まで利子1.5%で貸付けを受けられます。貸し付けの申し込みは、居住地の市町村社会福祉協議会を経由して都道府県社会福祉協議会に行うので、お問い合わせは社会福祉協議会まで。
被災者は税金や社会保険でも優遇が受けられる
被災者には税金や社会保険でも特別措置が行われます。■税金の特別措置
住宅や家財などに損害を受けた場合は、雑損控除と災害減免法による所得税の軽減免除のどちらか有利な方法で、所得税全額、あるいは一部を軽減することができます。詳しくは税務署まで。相続人が被災者の場合、通常は3カ月以内である相続放棄や限定承認の判断を一定期間まで延長されることがあります。
■社会保険の特別措置
- 雇用保険
特例として、失業等手当の個別延長給付が支給されることがあります。東日本大震災では雇用保険の失業等手当が210日延長されました。お問い合わせは住所地のハローワークです。 - 遺族年金
通常、行方不明の人の遺族年金は1年経過した日以降に支給決定、支払いが行われます。東日本大震災では行方不明者の生死が3カ月間わからない時は失踪宣告を待たず、死亡日を3月11日と見なして遺族年金の請求ができるようになりました。お問い合わせは市区町村役場または年金事務所です。 - 健康保険・国民健康保険
災害救助法適用の市区町村のうち、災害で住宅や大黒柱を失った人や廃業や失業をした人に医療費の自己負担分が免除され、保険料の納期限が延長されたりしました。お問い合わせは健保組合や市区町村役場です。 - 国民年金
自然災害による被害が大きければ、申請により国民年金保険料の全額免除・一部免除を受けられます。お問い合わせは住所地の市区町村役場です。
自然災害による被害が大きい場合は、身の安全を第一にするとともに、可能なら災害直後の家の損害状況などを写真に撮っておくといいでしょう。ラジオ(電池式)や各自治体や内閣府、厚生労働省、国税庁などのホームページやフェイスブック、ツイッターなども活用して情報を集めることも重要です。
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