今回は、頻繁に自社株買いを行っているキヤノン(7751)をケーススタディとして取り上げながら、自社株買いと株式投資の関係を見ていきたいと思います。
自社株買いには3つの効果がある
自社株買いとは、企業が自らの株を購入することをいいます。「キヤノンがキヤノン株を購入する」というのが自社株買いです。企業が株を新たに発行して資金調達する「新株発行増資」とは対照的ですね。では、企業はなぜ自社株買いを行うのでしょうか?自社株買いには次の3つの効果があります。
【図 自社株買い3つの効果】
1つめの「経営者の株価に対するメッセージ効果」とは、経営者が「今の株価は安すぎる!」と考えているという意思を表明する効果です。
経営者は、その企業について最も熟知した人です。企業の事業内容、収益力、将来性などについて誰よりも詳しい経営者が、その時点の株価で自社株を購入することを決断するわけです。
高すぎる株価で自社株買いをしてしまえば、売り抜けた株主は適正な株価よりも高い株価で売却できたのだから、トクです。でも、株を売らなかった既存株主にとっては、企業から理不尽に現金が流出してしまい、不利になってしまいます。
ですから、経営者は自社株買いをするときに、株価水準には細心の注意を払います。
ともかく、その企業について最も詳しい経営者が「買い」と判断したこと自体が、マーケットに対して強い意思表明になるのです。
2つめの「需給の改善」とは、自社株買いにより資金力の大きな買い手が登場するわけですから、需給が改善するという効果です。
株式市場においては、やむをえない事情で株式を売却する人も出てきます。そういう売り需要に対して、企業の自社株買いは強力な買い需要として立ち向かうのです。
なお、自社株買いが需給に与える影響が大きいかどうかは、「発行済株式数」に対する「取得予定の株式数」の割合で判断することができます。
例えば、2012年7月30日にキヤノンが発表した自社株買いは、発行済株式数11億7116万7703株に対して、取得予定の株式数は2100万株でした。その割合は、1.8%になります。
一般的には、1~2%の範囲の場合が多いのですが、ときには10%を超えるような大規模の自社株買いが行われるケースもあります。
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