見てて思うのは脚本の宮藤官九郎の80年代アイドルへの思い入れの強さ。「潮騒のメモリー」は自身が5分で作詞したそうですが、過去のアイドル歌謡の要素が散りばめられ、血肉と化していることがわかります。
過去の作品でも80年代アイドルを重要な役として効果的に使っています。そんな宮藤官九郎脚本で80年代アイドルが活躍するドラマを三作紹介します。
『木更津キャッツアイ』と薬師丸ひろ子
初連ドラの『池袋ウエストゲートパーク』は石田衣良の原作つき、次の『ロケット・ボーイ』は織田裕二の椎間板ヘルニアによる中断などで盛り上がらず。クドカン節全開となったのは『木更津キャッツアイ』から。末期がんで余命半年の元高校球児のぶっさん(岡田准一)は、人のために生きることを決意、高校からの野球友だち(櫻井翔、岡田義徳、佐藤隆太、塚本高史)と怪盗団を結成し地元の問題を解決していく。
とあらすじを書くとシリアスぽいけど、ギャグをちりばめ暗さを感じさせず、それでいて叙情的な雰囲気の独特の世界を描いています。
また野球モチーフで一話、いや一回の中で表と裏がある構成が特徴。毎回まずは「表」で事件が進行してとりあえず解決するのですが、でもなぜ解決したのか疑問が残る。そう思っていると巻き戻されて今度は「裏」がはじまり、「表」で隠されていたことが描かれ事件の全貌がわかります。
この表裏構成、『あまちゃん』第8週「おら、ドキドキがとまんねぇ」でも表裏とはいってませんが使われました。週の初めから微妙に違和感のある展開でしたが、種市先輩(福士蒼汰)とユイ(橋本愛)が付き合う予定だということが明らかになると、さかのぼって裏で二人の仲がどのように進行していったのかという「裏」が描かれる、久々の『木更津キャッツアイ』展開でした。
登場する80年代アイドルは、『あまちゃん』後半の重要人物、鈴鹿ひろ美役の薬師丸ひろ子で主人公たちの高校時代の恩師、美礼先生役。
教頭と関係を持ってストーカー被害を受けたことから学校に爆弾をしかける、生徒に馬鹿にされると下駄箱にカエルを入れたりカバンにタコを押し込んだりと復讐、その場しのぎのでまかせで周囲を振り回すなどかなりひどいことをしているんだけど、主人公たちからは愛されています。それに違和感を感じさせないのは薬師丸ひろ子の持ち味でしょう。
薬師丸ひろ子は角川映画『野性の証明』のオーディションからデビュー。角川映画はテレビとのメディアミックスで映画をヒットさせるという今のテレビ局制作映画のモデルともいうべき存在で70年代後半~80年代前半を席巻。
薬師丸ひろ子はその中心的存在で、『セーラー服と機関銃』など主演作の主題歌を歌い映画も歌もヒットさせるという、当時主流の歌手メインのアイドルじゃなく映画女優のアイドルという独自のポジションを築きました。
次は「初の恋愛ドラマ」