Raw画像の現像の魅力とは?
Rawは、デジタルカメラが撮影した情報が、そのまま記録されている画像データです。「そのまま記録されている」ということで、Rawには、レンズの歪みや色収差などの特性がそのまま画像に反映されています。画像の歪みや色収差などは、写真を作品に仕上げる際には不要なものですから、Raw現像をすることで、それらの不具合を取り除くことができます。もちろんRaw現像では、画像にさまざまな修正や加工をして、新たなイメージを作り出すこともできます。デジタルカメラで撮影されている一般的な画像形式「JPEG」でも、画像の加工はできますが、JPEGは圧縮(間引き)された画像データであるため、Rawに比べると色や濃度の情報が少なく記録されています。
ですから、JPEGよりも多くの情報をもつRawだからこそ、よりバラエティに富んだアレンジができるのです。
Raw画像を使った写真加工例。JPEGよりも色や陰影に深みのある作品に仕上がる。
今回はそのようなRaw現像によるユニークな3つの写真加工例を紹介します。
Rawから作るHDR風画像
写真は細かい色の粒が集まって形を表現しています。色の明るさは大きく分けると「暗い」「中間の明るさ」「明るい」という3段階の明るさから構成されています。Raw画像はこの明るさの階調に、JPEG画像よりも多くの色の情報が含まれているため、柔軟で幅の広い加工が楽しめます。
Raw画像を使った写真加工の手法として代表的なのがHDR風画像の作成です。例えば下図は加工を施す前のRaw画像です。一目でわかるように逆光のため、空の一部が白くまぶしくて、建物が黒く暗くなっています。
逆光のRaw画像。これをHDR風の加工をすると...?
この画像をHDR加工したものが下図になります。
逆光のRaw画像をHDR加工をしたもの。印象ががらりと変わる。
HDRとは「ハイ・ダイナミック・レンジ」の略で、その名の通り階調をより強調することによって、力強さを感じるような印象になるのが特徴です。本来複数の明るさの異なる写真を合成して白飛びや黒つぶれしないように階調を広げるという手法ですが、階調豊かなRaw画像を使うと手軽にこのような「HDR風」の画像を作ることができます。
HDR風加工のキモとなるのが「明瞭度」(Lightroom)や「精細度」(Aperture)と呼ばれるコントロールです。この数値を高めると、各階調の幅が広がり全体のコントラストが強調され、よりくっきりした印象が強まります。
「明瞭度」(Lightroom)や「精細度」(Aperture)
さらにできるだけ黒つぶれや白飛びをしないようにトーンカーブや彩度を強調するとより効果が高まります。
Rawから作る深みのあるモノクロ写真
Raw画像は、白黒の写真でも奥行きのある作品を作ることができます。白黒でも元画像の色の明るさに関する情報が含まれているため、陰影の強弱についても細かく調整できるのが特徴です。調整の方法は上記のHDR風とほぼ同じです。はじめに白黒化して、それぞれの色の明るさを調整することにより、白黒でも深みのある印象になります。
白黒化をした後に「明瞭度」を高めて、各カラーの明暗を調整して深みを出す。
さらに、写真の周りに円形のぼかしが入った暗い枠の効果を加えたりハイライトとシャドウにそれぞれ着色をすることによって、古めかしいイメージになります。
あえて古めかしい効果を加えた例。
Rawから「ゆるふわ」なパステル調の画像を作る
下図の左側のRaw画像を、今度は逆に「明瞭度」を下げ、明るさと鮮やかさを強めることで、右側のようなふんわりした印象に変わります。「明瞭度」を下げるとふんわり柔らかい印象に。
さらに白黒画像を着色したのと同じ方法で、ハイライトとシャドウにそれぞれ異なる色を指定することで、パステル調の幻想的なイメージも作ることができます。
この手の加工においてもやはりRaw画像はJPEGに同じ設定で加工したものよりも色に深みが出るのが特徴です。
このようにRaw画像は色や明るさを柔軟に調整できるため、さまざまな新たなイメージを作ることができます。しかしながら、あまりにも大きな加工をした画像は、明らかに現実離れしていることから、好き嫌いが分かれるのも事実です。
Rawのデータの中には、レンズのゆがみなども含まれていますが、自分の目ではとらえきれなかった色やものが確実に記録されています。それは現実をねじ曲げているわけでは無く、デジタルカメラのセンサーがレンズを通してとらえた生の姿です。
このようなRaw画像の中にある色の情報をもっと利用して、自分の思い描くイメージ作りの幅を広げてみませんか? きっともっとRawで写真を撮りたくなりますよ。