ワイルドな魅力が光る復讐劇
『ザ・スリングショット~男の物語~』
食品偽装の濡れ衣で兄が自殺をしたことをきっかけに、金に翻弄される世の中に戦いを挑んだ男と、金で世界を握ろうとする冷酷な天才サイコパスの戦いを描いたドラマ。パク・ヨンハは苦労知らずのお坊っちゃまから、復讐に身を投じるワイルドなキャラクター・シン役に扮し、アクションにも果敢に挑戦。これまでのソフトなイメージを完全に脱ぎ去ったことが大きな話題を呼びました。
シンが兄に濡れ衣を着せたサイコパス・ドウ(キム・ガンウ)から全財産を奪うべく、個性あるメンバーを従えて詐欺集団を結成する序盤のストーリーは、どこか映画『オーシャンズ11』みたいなノリですが、後半はそこに家族愛や友情、ラブも盛り込まれ、駆け引きあり、逆転あり、ロマンスありのスピーディーなドラマが展開します。裏番組が『善徳女王』と『僕の妻はスーパーウーマン』だったために視聴率では苦戦しましたが、ドラマ自体の評価は高く、ヨンハの一皮むけた演技も必見です。
残念ながら2009年の本作が彼の最後のドラマ出演作。予断ですが、私はソウルで行われた『ザ・スリングショット~男の物語~』の制作発表会を取材したのですが、会見の際に、自分に集中しがちな質問を脇の俳優たちにもさりげなく振ってみたりする、彼らしい気配りが感じられました。
最近、アン・ギョンテ役で共演したパク・キウンにインタビュー取材する機会があったので、彼が尊敬する俳優として挙げるパク・ヨンハについて尋ねたところ「俳優は演じるだけでなく、周囲の人々への配慮が必要なことをヨンハ先輩から学んだ」そうで、亡くなった今も実感がわかないくらい大好きな先輩だとのことでした。ファンだけでなく、仲間の俳優や現場のスタッフからも愛されていたようで、改めて韓国芸能界において大切な人が失われたことが悔やまれます。