極めて難しい移民政策
この問題は、スウェーデンに限ったものではありません。欧州は移民を積極的に受け入れる国が多く、人口の10%以上が移民である国も数多くあります。受け入れ側としては、将来的には完全に自分の国に「同化」してほしいと思っている場合がほとんど。つまり、言葉を覚えて国家に忠誠を誓い、かつ文化や風習を受け入れることです。出身国のことは、少しずつ忘れてもらうのが適切だと考えていることでしょう。
しかし、現実はそううまくいかないケースが多く、移民の多くは自分達の言葉を話し、自分達の文化圏をその国のなかに築いていきます。多くの場合、移民は移民同士で固まって、自分達の「町」を築いていきます。そうなると、その町の公職も移民だけで占められ、反対に現地人が排斥される事態になってしまうことも少なからず起こっています。
多くの国で現地人が移民によって生活を脅かされていると感じ、移民排斥などを政策に掲げる極右政党が台頭してきています。フランス、ギリシャ、デンマークなどで、そのような極右政党が勢力を拡大。政党以外でも、排他的な主張をする市民団体などが増えています。
ドバイやシンガポールは、正反対の厳しい政策
一方で、外国人に対して相当厳しい滞在制限を課している、ドバイやシンガポールなどの例もあります。ドバイの場合、外国人労働者が失業すると、すぐに滞在資格を失って帰国しなくてはなりません。シンガポールでは、女性の外国人労働者には定期的な妊娠検査が義務付けられていて、妊娠していると判明すると滞在資格を失います。
スウェーデンのように移民に対してとにかく寛容であるやり方とは、対極の政策といえます。
かなり難しい判断が伴う移民問題
少子化で人口減少が今後続くと予想されている我が国はどうでしょうか? 人口が減ると労働力が足りなくなったり、年金を支払う人が減り、年金制度が存続の危機に瀕するなど、さまざまな問題が出てきます。移民を受け入れるべきだとの声もありますが、今回のスウェーデンの暴動や、2011年7月に移民に反対する男が起こしたノルウェーのテロなどを見ると、極めて難しい政策と判断が伴うものであるとわかります。今後もし日本が移民を受け入れるとすると、かなり慎重な進め方が必要とされそうです。