この株高でも2%も稼いでない企業年金もある?
さらに、もっと低い運用成績にとどまる企業年金もたくさんあります。これだけ株価が上がっているので11%の平均になるどころか、2%くらいしか儲かっていない企業年金です。しかも、こうした企業年金では2%の成績に満足しています。なぜでしょうか。企業年金は、それぞれの会社ごとに運用方針を決めます。運用方針は企業年金の担当者が勝手に決めるものではなく、会社の経営者もチェックするほどの重要項目です。このとき「大きく負けて追加負担を求めることはNG」ということを重視し、株式をほとんど持たない戦略を選んでいる会社が増えているのです。
この運用方針を採用する理由のひとつは、企業年金の積立不足を会社の決算に載せなければならないためです。上場企業の場合、会社の借金とほぼ同列に「企業年金の積み立て不足も会社の債務」とみなされます。これを退職給付債務といいますが、企業年金の積立不足の増加が会社の決算を赤字にしては困るわけです。上場企業の場合、企業年金の資産も巨額であるため、マイナス10%の運用失敗が一事業部門の売り上げ好調を消し去ってしまうほどです。
先ほど全体の平均で株式保有比率が約2割といいましたが、実態としてはほとんどゼロに近いところと、もっと多く保有しているところに分かれます。株式を少なくしか持たない企業年金では当然ながら株高になっても大きなプラスはありえません。
こうした企業年金では、株式投資とはほとんど無縁の世界で運用をしているため、80%の運用成績は関係ないというわけです。
自分の会社の企業年金の成績は、自分で確認しよう
ここまでの話を読んで、「私の会社の企業年金はどうなの?」と思ったら、企業年金のディスクロージャー(情報開示)をチェックしてみましょう。企業年金は運用実態や積立不足の状況などを情報開示するようになっています。株式会社が株主に、銀行が預金者に情報開示を行うように、企業年金は社員にディスクロージャーをしなければならないからです。社内にイントラネットがあれば何らかの情報発信ページがあるはずです。基金だよりとか基金ニュースのようなペーパーを配る場合もあります。この場合、秋頃に配布されるはずです。3月末の数字を半年遅れ、というのはちょっと遅いかもしれませんが、情報開示をしていなかった頃に比べれば大きな進歩です。
こうした情報をぜひチェックしてみてください。「私の会社の企業年金は11%の成績だった」とか(あるいはそれ以上だったかも)、「私の会社の企業年金は2%の成績をあえて確保している」ということが分かるはずです。
銀行に定期預金が1000万円あったら、信用度をチェックするため時間を割くはずですが、企業年金のモデルが1000万円であっても、ほとんどの社員はほとんど知らないままだったりします。株価が好調な今こそ、その内容をチェックしてみてください。
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