ライフプランは金融機関が教えたくないこと?
金融商品を販売する金融機関が、教えてくれないことのひとつがライフプランです。投資信託などの金融商品を購入するとき、その金融商品の販売条件であったり、その金融商品の仕組み、その金融機関が取り扱う投資対象の仕組みなどについては納得がいくまで説明を受けられます。販売をする以上は、顧客にちゃんと理解してもらってから売るよう、法律で定められているからです。
ところが、「ライフプラン」については金融機関が教えなければならないリストに入っていません(そのお客さんがリスク商品を売っていいかチェックする「適合性の原則」がありますが、生活設計より投資経験や投資意欲をチェックすることが多い)。金融機関が教えるべき仕事は、「その金融商品の知識があるかどうか」であって、個人がその金融商品を買うにあたって判断すべき事情まで踏み込む必要はないからです。
これは仕方のない話でもあります。銀行が個人のライフプランまでずかずか踏み込んできて、助言をすることを好まない人も多いでしょうし、むしろ個人のライフプランまで踏み込んだうえで、金融機関の利益を優先してセールストークをされてしまうと、これを拒む手はあまりありません。ライフプラン教育を金融機関に義務づけすることにも、善し悪しがあります。
ところが、401kの投資教育においては、ライフプランを教育に盛り込むことができます。なぜなら、個別商品のセールストークを禁止されているからです。講師が金融機関の人であっても、純粋な教育としてライフプランを教えることができます。今回の改定では、特に老後の準備について以下のような項目を教育するとよい、としています。
- 老後の資産は現役時代に作らねばならないこと
- 老後が思ったより長いこと(65歳の男性で19年、女性で24年は余命がある)
- 老後の家計は公的年金等の制度が支えるが、十分とはいえないこと
- 老後に必要な資産額がどれくらいか考えさせること
- 現役時代の生活設計を意識しつつ、老後の資産づくりのための運用方法を考えること
実は、上記の項目の重要性について、私も何度か論じたことがあり、厚生労働省の人にも話をしたことがあります。「リタイアメントプラン」というと「老後に考えることね」となりがちですが、現役時代のうちに真剣に考え、実行に移していく必要があるわけですし、運用の計画を具体化するうえでもとても重要です。こういった知識が投資教育で広まっていけばいいなと思います。
これからは「投資」と「ライフプラン」はセット
金融庁が金融機関を指導するとき、なかなかライフプランと投資を結びつける発想が出てきませんでした。なぜなら「商品の販売」を軸に考えるからです。しかし今回、厚生労働省が確定拠出年金を通じて、「ライフプランと投資」はひとつつながりであることを示すことになりました。ちょっと興味深いことですね。FPにとっては、本来の得意分野であるライフプランニングを軸にしながら、投資教育を進めることができます。個人にとっても、「株式市場」を中心に置くのではなく、「自分」を中心にすえて運用を考えていくことができるのはとてもいいことです。
既に少し説明したとおり、運用の前提条件は「自分」に置いて判断をしなければ、金融機関のカモになるおそれがあります。自分の会社が401kかどうかに限らず、「投資」と「ライフプラン」はセットだと覚えておくと、役立つと思いますよ。
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