諸経費の考え方の違いを踏まえて比較評価する
「たくさんの見積りを見ていていつも感じることなのですが、業者ごとに諸経費の考え方は大きく違いますね」と語るのはO部長。価格調査をする上でも多数の業者見積りを比較している立場ですが、ある業者は諸経費ゼロ、別の業者は全体見積りの約7%、さらに別の業者は20%以上だったりと、施主がリフォーム見積りを単純比較する上では非常にネックになるところです。そもそも「諸経費」とは簡単に言うと「もろもろの経費」。リフォームに使用する木材や設備品などの「材料費」、設置のためにかかる大工や作業員の「人件費(工事費)」の他、仕入れやスタッフの給与を計算する事務員の給与や、事務所で使うコピー機やパソコン、光熱費、電話代などを個別に見積りに掲載していくと膨大な項目数になってしまいます。そこで建設業界では一般的に「諸経費」という項目を活用しています。
今回取材にご協力いただいた経済調査会のスタッフの皆様方。調査に携わる者として、業界の裏側や隙間のような話題についても意見交換させていただきました。
「材料費・工事費というそれぞれの項目は安いけれど、諸経費が高い業者の見積りと、それぞれある一定の利益が加算された業者の見積りを、どう比較評価するのかが重要です。私どもは条件によって見積り単価が異なるというのは当然として理解していて、真面目に努力している業者が仕事を獲得できるような資料を作りたいと思っています」とO部長は話してくれました。リフォームに携わる立場、そしてこの「リフォームにかかるお金」サイトを執筆する立場として、とても心強いお話です。
営業担当者が良いからといって工事が良いとは限らない
「営業担当者が丁寧で、説明に納得したからといって、実際の工事に携わる職人さんが良い工事をしてくれるとは限らない」(Tさん)というのも工事の難しいところです。施主と営業(見積り)担当者との間でじっくり話し合って作り上げたリフォームプランについて、ある日突然やってきた大工や職人が、施主のリフォームに対する思いや要望を瞬時に把握することは難しく、時には「伝言ゲーム」のように当初のリフォームプランが間違って伝えられ、その結果、「営業担当者はよくやってくれたけど、仕上がりがいまいちだった」というような残念な事例も数多くあります。こういった事例を防ぐためにも、リフォーム業者には、施主だけでなく大工・職人が理解しやすい見積り内訳書を作成してもらうことが非常に大切になってきます。私が「積算資料ポケット版リフォーム編」をご提案する理由の一つがここにあります。全てのリフォーム項目や単価が、そのお住まいにピッタリ合う訳ではありませんが、リフォームの見積りというものにはこういった項目があって、このような見積りの仕方があるのだ、ということを知っておくと、よりリフォームの成功率が高まってくると思います。
リフォーム初心者にもわかりやすい「すまいの建築費用」。今リフォームを検討中の方は一度見ておいて損はないと思います。
【取材協力】 一般財団法人経済調査会 住宅情報事業部