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出生前診断・新型出生前診断とは…特徴・リスク・注意点

【産婦人科医が解説】採血だけで胎児の病気の確率がわかると注目されている新出生前診断。正確には「無侵襲的出生前遺伝学的検査」「母体血細胞フリー胎児遺伝子検査」と言います。リスクは低いですが、精度も含めて正しく理解しておく必要があります。トリプルマーカーテスト、クワトロマーカーテスト、羊水検査、絨毛検査などの従来の出生前検査と併せて、検査の特徴とメリット、注意点を解説します。

清水 なほみ

執筆者:清水 なほみ

産婦人科医 / 女性の病気ガイド

出生前診断とは

妊娠中の女性・妊婦検診での相談

先天的異常の有無を調べる出生前診断。受けるかどうかは主体的な判断が大切です


広い意味での出生前診断は、妊娠中に胎児に異常がないかどうかを調べることをさします。一般の妊婦健診で行っている超音波検査も、胎児の発育や骨格・心臓などに異常がないかを見ているので、広い意味では出生前診断に当たります。

狭い意味での出生前診断は、高齢妊娠など染色体異常のリスクが高い妊娠において、妊娠の早い段階で先天的異常の有無を調べることを指します。これまでに行われてきた出生前診断の方法は、「トリプルマーカーテスト」や「クワトロマーカーテスト」、「羊水検査」、「絨毛検査」です。いずれも妊婦側の希望があった場合のみに、任意で行う検査です。
 

主な出生前診断の種類と精度・リスク

■ トリプルマーカーテスト/クワトロマーカーテストの精度・リスク
妊娠14~18週に妊婦から採血した血液の成分を調べる検査。胎児に影響はなく母体への負担も軽いという利点がある一方、羊水検査に比べ正確性に劣ります。また、異常の有無が分かるのは21トリソミー・18トリソミー・開放性神経管奇形の3種類のみに限られます。

いずれの場合も陽性結果が出たときは羊水検査を薦められます。

■ 羊水検査の精度・リスク
妊娠15~18週に羊水を採取してその数に含まれる代謝産物、あるいは浮遊する細胞の染色体を検査して、胎児の代謝疾患、染色体異常などを調べる検査。国内では年間約1万例実施されています。1/200~1/300の確率で流産を引き起こすリスクがあることや、胎児に異常が見つかった場合、中期の人工妊娠中絶につながる場合が多い、などの問題点があります。

■ 絨毛検査の精度・リスク
妊娠9~11週に胎盤の一部である絨毛を採取して染色体異常の有無を調べる検査。羊水検査よりも早い時期に検査ができるため、異常が見つかった場合の人工妊娠中絶の負担は軽くなりますが、羊水検査より流産の可能性が高いというデメリットもあります。
 

新型出生前診断(しんがたしゅっせいぜんしんだん)とは

従来の出生前診断に加えて、最近可能になったのが新型出生前診断です。妊娠10週以降の妊婦から血液を採取し、その血液中に浮遊しているDNA断片を分析することにより、胎児の染色体異常を調べる非侵襲的検査です。

「新型出生前診断」はマスコミがつけた仮の名前であり、医学的に正確には「無侵襲的出生前遺伝学的検査(むしんしゅうてきしゅっせいぜんいでんがくてきけんさ、non-invasive prenatal genetic testing; NIPT)」、あるいは「母体血細胞フリー胎児遺伝子検査(ぼたいけつさいぼうふりーたいじいでんしけんさ,maternal blood cell-free fetal nucleic acid (cffNA) test)」と言います。

■新型出生前診断の時期・特徴・精度
  • 検査可能な時期:妊娠10週以降
  • 方法の特徴:採血のみなので妊婦や胎児への負担やリスクが少ない
  • 異常の有無が分かる疾患:21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーのみ(そのほかの染色体異常の有無は分かりません)
  • 陽性的中率75~95%
  • 陰性的中率99.9%
  • 検査が受けられる人:35歳以上の高齢妊娠・本人または夫が染色体異常保因者・染色体異常がある子どもを産んだことがある人
 

出生前検査を受ける上での注意点

この検査を受けるにあたって注意すべきなのは、検査ですべての異常が分かるわけではないということです。先天異常の赤ちゃんは、100人に3~5人程度の頻度で生まれてきます。染色体異常症は新生児のおよそ0.6%に確認されると言われています。新生児の染色体異常症のうち、ダウン症候群、18トリソミー、13トリソミーが占める割合は2/3程度であると考えられています。

つまり、この検査を受けて「異常なし」という結果であっても、「正常な赤ちゃんが生まれてくる」ということとイコールではないということを理解しておく必要があります。

日本産科婦人科学会の指針では、母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査を行う施設が備えるべき要件として「遺伝に関する専門外来を設置し、出生前診断の十分な知識や豊富な診療経験を有する産婦人科医師、小児科医師が常時勤務しており、検査を希望する妊婦に対する検査施行前と検査施行後に遺伝カウンセリングを、十分な時間をとって行う体制が整えられている施設」等が挙げられています。

これらの要件を満たす施設が実施するためには、日本医学会の下に新設された「母体血を用いた出生前遺伝学的検査 施設認定・登録部会」に申請し、実施施設として認定される必要があります。検査を受ける場合にはこれらの要件を満たした病院で受けるようにしましょう。
 

検査を受けるべきかどうかの判断は「本人」次第

最近は高齢になってから妊娠を目指す人が増えているために、検査を受けようかどうか迷うという方も多いと思われます。また、万が一結果に異常が出た場合にどうすべきなのかは、非常に悩ましい問題となってきます。

検査を受けるかどうか、そしてその結果をどう受け止めるかは、妊婦本人とそのパートナーだけが決めることです。周りが「検査を受けた方がいいのでは?」と促したり、検査の結果を聞いて出した結論に対して意見を言ったりすることは絶対に控えるべきことです。

検査を受けるかどうかは、まず遺伝カウンセリングを受けてからじっくり検討することをお勧めします。検査自体は負担の少ないものですが、けっして「気軽に」受けるものではないということを理解しておきましょう。
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