ですから、たとえ毎日朝立ちしたとしても、自慰行為で射精できたとしても、パートナーとの性交時にうまく勃起せず満足にフィニッシュできなければ、EDと考えてよいでしょう。
このようにEDは、パートナーとの性交がちゃんとできるかどうかが大きな決め手になります。つまり、EDは「男性の性機能障害」ではあるものの、男性ばかりでなく、女性にも大いに関係の深い病気であるといえるのです。
望ましい「診察へのパートナーの同席」
ED治療の第一選択は、ジェネリック商品などのED治療薬の服用です。それらは大きな効果を期待することができますが、処方してもらうには医師の診察を受けなければなりません。多くの病院やクリニックでは簡単な問診だけでED治療薬が処方されます。患者さんの症状に応じて、採血や心電図などの追加検査が行われることもあります。
診察の中心となる問診では、
- EDの発現時期と時間経過
- 他の性機能障害の有無
- パートナーとの関係
- 既治療の有無・効果
- その他の疾患と服用している薬剤
――などが尋ねられます。
一般の医師がこうしたED診療の際に用いる『ED診療ガイドライン[2012年版]』(日本性機能学会、ED診療ガイドライン2012年版作成委員会編)では、望ましい診断方法として「パートナーを評価・治療方針の決定に関与させること」を挙げています。
受診をためらう男性の背中を押す役目も
同席には女性の立場でEDを理解したり、気後れする男性の背中を押したりする効果も
男性とパートナーとの関係やあり方はさまざまですから一概には言えませんが、気後れしてなかなか受診に踏み切れずにいる男性の背中をそっと押してあげるのも、パートナーの大切な役目です。
とくに、EDがネックとなって子供がなかなかできないような場合、ED治療の役割は重要です。子づくりがあせりや重圧となって、妻の排卵日前後に決まって勃起しなくなる、という例もあります。そうでなくても、単純に性交ができないことが男性不妊の原因となることもあります。
EDはパートナーとの良好な性的関係を損ねるばかりでなく、その陰に潜む脳疾患や心臓疾患などの重大な病気につながる可能性も秘めているので、なおさら男性を診察に向かわせてあげることが大切なのです。
受診の敷居を低くする効果も?
ED治療を行っている全国の開業内科医に協力を得て実施した患者動向調査では、「ED患者あるいはその予備軍は、医師にEDについて相談してみたいが、なかなか切り出せない状況がうかがえる」と分析しています。この調査によると、40~70歳代で「相談してみたい」と回答した人のうち、「条件がそろえば、必ず/ぜひ相談したい」と強い意向を持っていたのは64%で、特に40歳代では80%を占めていました。性的にアクティブな年代の関心が高いのです。
逆に、医師に相談していない理由の上位には「年だからあきらめている」(43%)「恥ずかしい」(32%)、「個人的問題なので言い出しにくい」(24%)、「看護師に聞かれたくない」(14%)などがありました。
その背景には、プライドや羞恥心が邪魔をして病院やクリニックなどの玄関をくぐりにくいという、男性なりの事情が見え隠れします。パートナーが同行し、男性の気持ちが和らげば「受診の敷居を低くする」こともできそうです。
正しく使うための知識の共有を
EDは女性にも関係が深い病気。治療には「パートナー」の協力が大切
- 男性としての自信が回復した
- パートナーとの精神的結びつきが深まった
- 今後の人生に前向きになった
- 男性としての自尊心が回復した
- 仕事に集中できるようになった
――などの回答を挙げています。
たとえ、ED治療薬の力を借りたとしても、十分な性的満足を得るためにはパートナーの理解と協力が欠かせません。その意味でも、治療効果に関わるパートナーの存在は大きいといえます。
パートナーの中には、ED治療薬の副作用を心配する人も少なくありませんが、医師の指導のもとで適切に使えば安全です。副作用を恐れるより、正しく使うための知識を共有する上でも、パートナーと一緒に受診することをおすすめしたいと思います。
>>男性のEDに、女性はどう向き合うべきか
>>ED治療はパートナーと一緒に受けるべき?