DIC・播種性血管内凝固症候群とは……
血栓ができやすく、出血しやすくなる病気
血液の病気である「DIC(播種性血管内凝固症候群)」。血管内に血栓ができやすくなる一方、出血もしやすくなるため、命にかかわる病気です
血管に穴が開いて出血してしまった場合、その箇所で「血小板」と血を固める糊のような働きをする「凝固因子」が血の塊を作り、それ以上出血しないよう血管の穴を塞いでくれます。
しかし様々な原因で、全身の至るところの血管内で無秩序に血を固める機能が強くなってしまい、血小板と凝固因子が消費されてしまうことで、肝心な箇所での止血機能が失われ、様々な臓器で出血しやすくなってしまう症候群があります。これが、「DIC」(Disseminated=播種性、Intravascular=血管内、Coagulation=凝固))、日本語で「播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん」と言う病気です。
血栓が作られるような凝固機能が高まる一方で、止血ができなくなるといった凝固機能の低下が見られる状態になっているため、治療が難しく、重症化しやすい病気と言えます。
この血栓が全身に継続して起こってしまうと、凝固反応を抑えようとして凝固制御因子のアンチトロンビンが凝固因子であるトロンビンに結合し、トロンビンの効果を抑制します。できた血栓を溶かそうとしてプラスミンという酵素が活発に働くようになります。血栓を溶かす働きが全身の血管や組織で暴走してしまって、出血傾向を起こします。
DIC・播種性血管内凝固症候群の症状・症例画像・死亡例
赤かったり、紫であったり、皮膚になかなか消えないのが出血斑です(金沢大学 血液・呼吸器内科HPより引用)
一方、出血しやすい状態のまま脳出血が起きると、けいれんと意識障害が出現します。血尿、消化管出血の場合は下血と吐血、皮膚では内出血や、赤い斑点である点状出血斑が起こります。
重症例では、脳出血によるけいれん、意識障害、全体の臓器が低下する多臓器不全になり、場合によっては死にいたる怖い病気でもあります。この病気になってしまった場合、採血での出血も全く止まらなくなってしまいます。
DIC・播種性血管内凝固症候群の原因……がんや感染症の合併症でも
がんや感染症などに合併します。- 細菌が血液に侵入した感染症である菌血症、重症感染症である敗血症
- がん。特に膵がん、胆管がん
- 急性白血病
- 外傷、重症のやけど、手術
- 自己免疫疾患などの膠原病
- 大動脈瘤、巨大血管腫、血管炎
- 膵炎、劇症肝炎、ショック、低酸素、熱中症
- 妊娠での胎盤が分娩前に剥がれる常位胎盤早期剥離、羊水が母体血中へ流入することによって引き起こされる羊水塞栓症
重症な熱中症でも起こるので要注意です。
DIC・播種性血管内凝固症候群の治療法
血栓の発生を防ぐ薬の1つで、もともと体にあるトロンボモジュリンです(旭化成ファーマ写真提供)
原因の治療として、例えば感染症が原因で起きているのであれば、抗菌薬による感染症治療を行います。同様に、膠原病が原因であれば、膠原病に対する治療を行います。がんに対しては抗癌剤による治療になります。抗癌剤の場合は血小板の減少に注意が必要です。
凝固因子の消費を抑えたり、凝固因子の補充をするために、血管内で起こっている凝固機能を抑える治療が必要なので、トロンボモジュリン、ヘパリン、ダナパロイドナトリウム、アンチトロンビン、メシル酸ガベキサーと、メシル酸ナファモスタットなどの薬を使用します。
ヘパリンは、アンチトロンビンとともに凝固にブレーキをかけます。しかしDICの場合、アンチトロンビンも消費されて減少していくため、アンチトロンビンⅢ製剤を補充します。メシル酸ナファモスタット、メシル酸ガベキサートは、トロンビンや活性化第Ⅹ因子を不活化できる合成タンパク分解酵素阻害薬になります。
血液成分に含まれる凝固因子を補充する方法として献血由来の新鮮凍結血漿を輸血することがあります。血小板がかなり低下し、出血のリスクが非常に高い場合は、血小板輸血を行うこともあります。
貧血が重症で、あくまで凝固を抑える治療をしている時に限り、輸血を行うこともあります。とにかくDICの原因を治療することが重要なのです。
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