インフルエンザウイルスの種類と「H7N9型」鳥インフルエンザ
インフルエンザウイルスは、ウイルスの表面の突起によって、A型、B型、C型に分かれます。ヒトに感染するのは、A型とB型です。特にインフルエンザA型の表面にあるヘマグルチニン (HA) とノイラミニダーゼ (NA) という成分には、様々なタイプがあります。HAは1~16、NAは1~9まであり、HAとNAのタイプによって、呼び名が異なります。皆さんも聞いたことがあると思いますが、「ソ連型(ロシア型)」「パンデミック2009」と言われるのは「H1N1亜型」のことで、「香港型」と言われてるのは「H3N2亜型」のことです。今までヒトへの感染が報告された鳥インフルエンザウイルスは、「H5N1亜型」のみでした。しかし今回、「H7N9亜型」の鳥インフルエンザウイルスがヒトへの感染が中国で報告されたのです。そもそもヒトと鳥とは、細胞が異なりますので、鳥インフルエンザがヒトに感染する可能性は低いはず。さらに鳥とヒトでは体温も異なるのも、感染しにくい理由の一つでした。
しかし、インフルエンザウイルスはブタ、鳥、ヒトに感染していく中で、自らの遺伝子を変化させることで、ヒトにも感染するようになると言われています。2009年に流行したインフルエンザウイルスは、ブタ由来の遺伝子を含んでおりました。
H5N1亜型の鳥インフルエンザは鳥からヒトへ感染で、現時点では、ヒトからヒトへ感染の可能性が低いです。H7N9亜型の鳥インフルエンザも、鳥からヒトに感染しても、ヒトからヒトへの感染は低いとされています。しかし、今後ウイルスが変異してヒトへの感染能力が高まった場合、ヒトからヒトへの感染の可能性が生まれ、その場合は大流行する恐れが危惧されます。
H7N9型の鳥インフルエンザの感染経路
飛ぶトリは拡がる可能性があり、危険です
ハト、ニワトリとの接触は避けた方がいいでしょうし、今後、鳥類の接触は控える方がいいでしょう。ただし、ウイルスは加熱で殺菌できますので、鶏肉や卵はしっかり火を通せば大丈夫です。
ヒトからヒトへの報告は、幸い現時点では低い、またはないとされています(2013年4月21日 WHO報告)。生きた鳥との接触を制限してから感染症の増加が止まりつつあります。その意味では、ヒトからヒトへの感染の可能性は低いと言えます。
H7N9型の鳥インフルエンザの症状
症状は高熱、咳、息切れ、鼻水で、重症の肺炎を起こしやすいと報告されています。鳥インフルエンザは高熱でも病原性が維持されるため、ヒトが感染すると、季節性インフルエンザよりも重症になりやすいと考えられています。肺炎が重症化するために、死亡例が出ていると推察されます。なお、H5N1亜型の高病原性の鳥インフルエンザは、さらに、様々な臓器への障害を起こし、機能が低下して、重症化します。
WHOの報告によると、H7N9型は、感染者131人中、死亡32人(2013年5月10日現在)。季節性インフルエンザより死亡率が高いことがわかります
H7N9型の鳥インフルエンザ治療
抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ)に効果があると報告されています。抗インフルエンザ薬はウイルスの増殖を抑える薬ですので、早期に投与すれば、効果を発揮できます。実際、H5N1型の高病原性の鳥インフルエンザでも、早期の抗インフルエンザ薬使用によって死亡率は低下しました。また、感染予防と重症化予防の点では、新しいワクチンの開発が望まれます。インフルエンザの場合はワクチン開発まで約6カ月かかるので、それまで拡大しないように注意が必要です。インフルエンザウイルスは、ウイルスの遺伝子が非常に変化しやすく、感染力が高くなる可能性があるため、いつ、鳥インフルエンザが、ヒトからヒトへの感染を起こすか判りません。一度流行すると、グローバル化が進みヒトの動きが盛んな現代では、あっという間に2009年のような大流行につながる恐れがあります。
個々人がいくら注意していても、毎年、季節性インフルエンザは流行しているので、一番よいのはインフルエンザに関する情報にもっと注意し、時にはヒトの行動の制限にも従う考えでいないといけないかもしれません。
H7N9型の鳥インフルエンザ予防策
現時点では、ハトとニワトリからヒトへの感染のみですので、鳥との接触を避けることが大切です。- 中国からの生きた鳥を扱わない
- 死んだ野鳥や元気のない鳥には近づかない
- 日本でのニワトリなどの情報に注意する
- 卵や鶏肉などの加工品からインフルエンザに感染したという報告はないので、心配し過ぎない
- 中国旅行を可能なら控える
- 中国から帰国する時には、発熱、咳などに注意する。日本への持ち込みをなくすために検疫所でしっかりと体調を伝える(自分の治療にもなります)