一途な恋心を想像させる声とコーラスの美しさ
私が初めて好きになった、文字通り「初めて好きになった」曲です。当時はまだ幼稚園に通っていた時期で、初恋はまだ経験していなかったので歌詞の意味はまったく分かりませんでした。村下さんの温かみのある声と、深みのあるコーラスワークに惹きつけられ、カセットテープを繰り返し再生して何度も聴いていました。村下孝蔵さんのテレビの特集で「初恋」も取り上げられていましたが、もともとはスローバラードにする予定だったそうです。最終的には編曲を担当された水谷公生さんの提案でミドルテンポにアレンジされていますが、あえてポップに仕上げることで初恋を経験する若さが表現されているように思えます。
私は村下さんの歌い方が大好きで、一途な恋心を想像させる発声法と幾重にも重なるコーラスの美しさに、1度聴き始めると止められなくなってしまいます。また、初恋を「ふりこ細工」に例えたり、「浅い夢だから胸をはなれない」といった描写からは日本語の持つ美しさを感じます。
他にも、「踊り子」や「ゆうこ」といった透明感を感じさせる歌声と曲調の切ないポップスがヒットしています。また、数多くの歌手に楽曲提供をしていますので、村下さんの曲を歌いたいという人は多かったのでしょう。なお、若い頃は寺内タケシさんやベンチャーズ、加山雄三さんに憧れ、エレキギターの演奏を得意とされていたそうです。
残念ながら、1999年のコンサートのリハーサル中に脳内出血に倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまいました。もしご存命ならもっと素晴らしい曲をたくさん聴くことができたのではないかと思います。まだ46歳という若さだっただけに、その死が大変惜しまれます。今年は村下さんの生誕60周年なので、改めてさまざまな曲を聴きながら偲んでいます。