ズバ抜けた表現力を持つ玉置浩二の魅力
80年代の歌謡曲は当時小学生ながらもベストテンをよく見ていた影響で結構よく覚えています。この時代の歌謡曲は明るくて華々しいイメージがありますね。チェッカーズ、アルフィー、C-C-B、いろんなグループがいましたが、私が一番心をわしづかみにされたのが、安全地帯です。私の中で80年代の玉置浩二さんは「美しい歌声を持つヴォーカリスト」不動の1位です。今のお声もいいのですが、裏声や高音がきれいな頃は「妖しさ」も持ち合わせていて、表現力がズバ抜けていたと思います。
歌詞をながめると、よくある恋の歌・別れの歌で、特に印象的なフレーズがあるわけでもないのですが、曲が始まるとさっとその曲の風景に自分が引き込まれます。去ってゆく恋人の幸せを願う僕に自分がなりきったり、踊ろうと誘う彼と疑似恋愛をしている気分になったり。
チャラチャラした軽いラブソングでも、彼らが演奏し、歌うとリアルな雰囲気を纏い、強い説得力が出る不思議。それは、時には力強く、時には囁くように、といったヴォーカルの玉置さんの言葉一語一語に丁寧に感情をのせて歌い上げる姿勢があったからではないでしょうか。
ここまで激しい感情移入ができたのは、リアルタイムではなく、多感な時期である十代後半になってからCDを買いあさったせいかもしれませんが、今聞いても切ない歌声にはちょっと涙が出そうになります。
私自身ベスト版からハマったくちなのですが、もし80年代という時代感を強く感じたいならオリジナルアルバムを聴かれることをおすすめします。おすすめをあげるならば、当時レコード3枚組で発売された「安全地帯5」でしょうか。全36曲の脅威のボリュームで、次から次へと音が耳へ飛び込んできますが飽きさせません。おしみなく1枚のアルバムに仕上げるあたり、当時持っていた安全地帯のパワーの凄まじさを感じさせます。
ああ、80年代に自分が大人だったら絶対ライブを聞きに行ったのになあ。もうちょっと早く生まれたかった!