プレカット材とその特徴とは?
先日、埼玉県を中心に住宅供給を行う地場ハウスメーカー・ポラスグループのプレカット工場「ポラテック富士工場」が新たに開設され、その取材に行ってきました。今回はこの工場のことをご紹介しながら、話を進めていきます。ちなみに、ポラスグループのプレカット会社・ポラテックは全国展開しており、売上高などで業界トップの規模を誇る企業。茨城県のほか、滋賀県、宮城県(今年2月に稼働を開始)にも工場を有しています。富士工場はその子会社であるポラテック富士という会社が運営しています。
まずプレカットとは、「pre」(あらかじめ)と「cut」(切る) を併せた言葉です。住宅は現在、コンピュータで設計(CAD=Computer-Aided-Design)することが一般的で、木材はそのデータに基づき自動で加工(CAM=Computer-Aided-Manufacturing) されます。
加工の仕方は原木をカットするわけではなく、あらかじめ国内外で厳選され角材や集成材とされたものを、設計図通りの用途や長さ形状、位置によって正確な加工を施します。そうして出来上がったものをプレカット材といいます。
木造住宅を建てる場合、単に柱や梁を組み合わせるわけではありません。必ず木材には継ぎ手・仕口などという凹凸があり、そらを緊密に組み合わせることで構造強度を持たせることになります。プレカット工場では、その加工も行われます。
ただ、それらはしっかりと寸法通りに加工されていないと、設計図通りの品質や性能、前もって計算されている耐震性能などを保てません。ですから緩みが出ないように精密に加工する必要があります。また逆に加工が大きすぎて組み合わせられないようなケースになると、今度は現場の施工時に削るなどの調整が必要になってしまいますから大変です。
木造軸組住宅の約90%に使われるプレカット材
木材にしっかりとした加工を施すためには本来、高度な職人の技術が必要になるわけですが、工場で精密機械により加工とすることで、高い品質と精度が実現できるわけです。ポラテック富士工場では、木材の加工が邸別の単位で行われていました。そうやってあらかじめ工場で加工された木材が施工現場に運ばれるわけです。ですので、最近の木造住宅の施工現場は実に静かで、施工スピードも速くなっています。また、端材などが散乱しているような、混乱した施工現場も減ってきました。
このあたりは誤解が多いようですが、かつてのように現場で木材をのこぎりで切ったり、かんなで削ったりして、トンカチと騒々しい光景は、現在の木造住宅の施工現場ではほぼ見られなくなっているのが実情なのです。
私たちの両親(読者の皆さんがあくまで現在30代から40代と仮定しての話ですが)が住宅を建てていた1980年代は、住宅業界においてプレカット普及率は数%だったのですが、現在では実に90%になるほどプレカット材を使うことが一般的になっています。
なお、プレカット材の普及と共に木材の主役となってきたのが集成材です。これは複数の木材を接着して一本の材を構成するものです。木材は自然素材ですから鉄などに比べ品質が均一になりづらいのですが、集成材にすることで品質が安定しかつ強度も高まります。
では、なぜこれほどプレカット材が使われるようになったのでしょうか。その理由から、地域工務店とハウスメーカーの価格差や、現在の住まいづくりのトレンドなどが見えてきますので、次のページでご紹介していきます。