コナコーヒーにこめた小さな農園の誇り

赤く色づいていくコーヒーの実。

赤く色づいていくコーヒーの実。

樹々がいっしょうけんめいに実らせたものだと思うと、除去しなくてはいけない欠点豆さえ可愛くてたまらず、とりのぞいた豆をとっておいたことも あるそうだ。近藤さんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、からだごと、樹との交流を体験したひとの味なのだな、と思った。

カフェソルテが扱っているコーヒーのなかには、その農園「プリンセスラダファーム」で収穫された生豆もある。
コーヒーの木。

コーヒーの木。

取材当時、近藤さんはお客さまから注文を受けるごとに、手焙煎でごく少量ずつローストしていた。わずか五十グラムずつの焙煎は風味を安定させるのが難し く、試行錯誤を繰りかえしたというが、それは手間と愛情をかけられて育ち、優しい甘みをもつプリンセスラダファームの豆にふさわしい焙煎方法なのかもしれない。  

一般に流通している大規模農園のコナコーヒーの多くは、あちこちで栽培された豆を寄せ集めたものだ。近藤さんは単一農園の焙煎と 販売を通して、小農園のファーマーたちの誇りと、「樹のエネルギーのカプセル」であるコーヒー豆そのものの力をお客さまに届けたいと考えている。
コーヒー農園の人々と近藤さん。

コーヒー農園の人々と近藤さん。


コーヒーの香りで目覚める朝

近藤さんのコーヒー・ヒストリーは二十歳のとき、母の育子さんが喫茶店を開いたことに始まる。そのころから育子さんが自宅でもコーヒーをハンドドリップしてくれるようになった。朝、ミルで豆を挽く音で目ざめて、二階まで漂ってくるコーヒーの香りに幸福を感じた記憶。

それから約二十年後、焙煎の仕事にたどりくつまでに転職を重ねてきたけれど、寄り道の数々を近藤さんは肯定している。

「すべてが現在につながっていて、無駄になったものはひとつもありません。二十代も楽しかったし、三十代も楽しかっ た。いろいろな体験をしたおかげで、いま好きなことに向かえている自分がいる」

人生は仕事と休暇、趣味、遊びなど、あらゆる場面で得た体験で満たされた一本の意味深いつるのようなもの-それが彼女の人生観 だ。

転機をもたらすのは、いつも旅……次ページへ。