年々、自宅からの通学生が増え下宿生が減っている
賃貸経営を取り巻く環境は、人口減少に伴い、急激な変化を受けています。こうした傾向は、これまで、私は何度かとりあげてきましたが、学生マーケットにおいても大きな変化を受けています。これからの賃貸経営では、こうしたマーケット変化も踏まえて、長期的な経営戦略を立てていく必要性があるのです。上図のように、独立行政法人日本学生支援機構の学生生活調査結果を経年的に比較すると、自宅からの通学生(以下自宅生)が増え、下宿生が減っています(昼間部国公立私立計)。この10年間で44.1%から39.3%と減っており、割合では5ポイントのダウン。10年前の下宿生実数から10%ダウンしていることとなり、満室だった物件は10%の空室になっているという計算になります。この調査は、下宿生の割合を出すことが目的の調査ではないのですが、無作為抽出でのアンケート調査であり、統計的には正しい傾向値と思われます。
別途、大学生協が定期的に調べている学生生活実態調査でも、自宅生と下宿生の比率は、2011年→2012年で、自宅生45.2%→47.9%、下宿生52.0%→49.4%と変化しており、下宿生の減少は間違いないところです。
大学入学率は9割。全入時代に突入
少子化の影響で志願者の実数は年々減っています。1986年度以降上昇を続けていた大学・短大志願者は、1992年度の120万人をピークに減り続けています。当時は、大学・短大の進学希望者のうち約3分の1は入学できない状況でした。その後、少子化による18歳人口の減少に伴い志願者数は減少を続け、ここ数年は75万人前後で推移しています。ピーク時の6割程度まで減少したことになります。一方、大学の定員数は減るよりはむしろ増え続けており、短大の大学4年制への変革なども進み、今は「全入時代」と言われます。つまり、志願者数は大学の定員を下回っており、偏差値などを気にしなければ入学は可能です。文科相の諮問機関は、大学・短大の入学率(入学者数÷志願者数)が100%となる、大学全入時代が2007年度に到来すると以前より試算していていました。実際には定員割れをする学校もありますし、レベルの高い大学に入学するため浪人する人もいます。
こうした環境変化は、賃貸経営にどのような影響を及ぼしているのか、次のページで解説します。