オペラの伝道師で極上のエンターテナー錦織健さん
代表的な出演作
錦織さん出演で特にお勧めは「錦織 健プロデュース・オペラ」シリーズです。2002年に始まり2,3年毎に開催され、これまで5度の全国ツアーがありました。最新作は昨年の「セビリアの理髪師」です。“誰でも楽しめるオペラ”を趣旨に掲げ、取りあげる演目はオペラ初心者の方々でも気楽に楽しんで観られる親しみやすい作品です。お勧めの理由
オペラのことを知り楽しめるようになるために、お勧めしたいオペラ歌手の方にはタイプがいくつかあります。一度は作品を観ておくべき本場の大御所(プラシド・ドミンゴ等)、ニューウェーブの実力派(Il Divo等)、欧米圏以外でオペラの普及に尽力されている方(今回ご紹介する錦織健さん等)、等でそれぞれ別々のオペラの魅力・楽しみ方を教えてくれます。
ヨーロッパの文化・伝統を色濃く反映し、古典とは言え現代と地続きの側面も多いオペラですが、やはり非欧米圏の人々には理解が困難な点も多々あります。
錦織さんのオペラに対する姿勢は正にそこから始まっています。つまりオペラの魅力をごく一握りの愛好者のものではなく、一般の方々に広く知ってもらうためにアカデミック或いはヨーロッパのコピー的なアプローチではなく、あくまでエンターテイメントとして楽しめる様に紹介していくスタンスが一貫しています。
その様なコンセプトで上演されるプロデュースオペラシリーズですが、分かりやすくするために、変な脚色を加えたり大衆的な感覚に迎合するのではなく鉄則として「誰でも分かる喜劇」「オーソドックス」「一流の歌い手」を三本柱に据え良質であることへこだわっている点がシリーズの高評価・ロングランにつながっていると思います。
一方錦織さんのオペラ歌手としての魅力はまず華があることが挙げられます。歌唱力はもしアカデミックな方向に進んでいたとしても名を成しただろうと折紙つきの実力者で、恐らくオペラ初心者の方が聴いてもこの方は歌が上手い、とはっきり分かるタイプだと思います。歌声は御歳50を過ぎた今も甘く品のある軽やかさ・透明感があるので聴いていて大変心地良いテノールです。
エンターテナーに徹しながらも裏打ちされた実力が垣間見える方だと思います。オペラに興味があるけれど楽しみ方がよく分からない方は錦織さんの公演にぜひ1度足をお運び下さい。