本来の日本の「和」を表現
なんと縁台をイメージした「ASB01」。AUNの開発にはコンセプターの坂井直樹さんが参加し、斬新なアイデアを次々生んでいった |
一方は、日本人ならではの「和」を見つけようという試みです。明治以来約140年間、日本人は欧米に追いつけ、追い越せとがむしゃらに進んできました。途中で何度かディスカバージャパンのブームも起きましたが、欧米偏重の意識は、特にインテリアの世界には根強くあります。畳の部屋が大幅に減ったことがその象徴といえます。
では「和」の暮らしとは何か、様々な意見がありますが、基本は「畳」に象徴されるフロアライフです。ただし床に直に座るのは、現在の生活では疲れます。そこで畳を床から持ち上げて、高座にしたのが、今回のアルフレックスの新作ソファといえます。
やっと日本らしい暮らしがスタートした
こちらは緒方慎一郎さんがデザインに参加した「ADT02」。脚部には南部鉄器を連想させる鉄黒色の鉄の角棒を使用。繊細な美しさを感じる。 |
今回のアルフレックスの新作は、欧米のライフスタイルに憧れ続けた日本人が、やっと日本人なりの暮らしをスタートさせる段階に入ったこと、その時代の転換期を象徴した出来事のように感じます。その「和」とは、伝統的な漆などとも異なる、本音の気持ちよさを追求したものになるでしょう。
いま都心で人気の飲食店は、和風ダイニングが中心です。土壁や木、和紙などの自然素材を使った空間で、仲間達やカップルでコミュニケーションを楽しむ。こうした流れがリビングにも浸透してきています。
和の空間には「ハレ」と「ケ」があります。「ハレ」はお祭りや結婚式など、晴れの舞台で演出される空間です。「ケ」は日常で、日本人本来の質素な暮らしの空間です。これまで「和」として新しくデザインされてきたのは、漆などを使った「ハレ」の空間のものが大半でした。
これからは「ケ」の空間をデザインしたものが増えそうです。アルフレックスのソファの生地に、普段着であった「かすり調」の柄が使われているのも、それを表わしているように思えます。こうした動きがどこまで浸透していくか、今後注目していきたいところです。