文化財だらけの宝物庫
本堂と多宝塔の2つは鎌倉末期の建築で国宝。さらに、近世以前の寺院景観を良好に残しているということで、境内そのものも本堂とセットで国宝に指定されています。南北朝時代の山門と阿弥陀堂、豊臣秀吉が桃山城内に建てた茶室「燕庵」を移築したものとされる露滴庵、江戸期の庫裏、客殿、方丈など、国重要文化財の建築は9件。境内にある一見なんでもなさそうな石塔も、鎌倉時代や南北朝時代のもので3件が国重要文化財になっており、いたるところ文化財だらけです。このほか、平安初期作の本尊十一面観音像など仏像4件、絵画3件、文書4件、工芸品2件が国重要文化財。県・市指定の文化財も加えればおびただしい数にのぼり、まさに、文化財の宝庫。所蔵の文化財は、秘仏となっている本尊など一部を除き、宝物館で見ることができます。
拝観無料がうれしい
国宝や国重文を抱える京都や奈良の寺院は、拝観料を払わないと境内にも入れないところが多く、境内無料のところでも内部拝観は有料ですが、尾道の浄土寺では、境内無料のうえ国宝の本堂に無料で入って拝観できます。無料で国宝の建物内に入れるところは、全国でも非常に珍しいのではないでしょうか。
足利尊氏ゆかりの寺
足利尊氏は1336年5月、西国から京をめざして進軍する途中、浄土寺に参詣し、弟直義らとともに本尊十一面観音像の前で観音讃仰の和歌33首(うち尊氏の歌7首)を詠じて奉納しました。国重文「紙本墨書観世音法楽和歌」として、今も残っています。境内には尊氏の墓と伝えられる宝篋印塔(国重文)があるほか、山門(国重文)に足利氏の家紋「二引両」(○のなかに=があるマーク)があり、尊氏との関係の深さが窺えます。やはり巨石スポット
尾道の古くからの信仰の場は、ほぼ例外なく巨石スポット。浄土寺の境内背後は、山麓から浄土寺山の頂上にかけて巨岩が連なっており、山頂の奥の院に登る鎖場が作られています。■浄土寺
住所:広島県尾道市東久保町20-28
参拝時間:9:00~17:00
電話:0848-37-2361
料金:境内無料、本堂拝観無料、庭園(国指定名勝)見学500円 宝物館400円
アクセス:JR尾道駅から徒歩40分。または、おのみちバス浄土寺下バス停下車。
HP:http://www.ermjp.com/j/temple/index.html
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