知られざる国重文の寺
西郷寺は踊念仏で知られる時宗の寺で、本堂と山門が国重要文化財に指定されています。本堂は1353年(室町時代)に二代目住持の託何が発願し足利尊氏の寄進によって建立されたと伝えられ、時宗寺院の本堂としては現存最古。とくに大きいわけでも、特異な外観をしているわけでもなく、いたって簡素なたたずまいの建物ですが、屋根瓦や木材の古めかしい色合いとか、左右対称のバランスのとれた形に、そこはかとない風格が漂っている気がします。また、ふだん本堂の中に入れないので確かめたことはありませんが、堂内には天井の龍の絵の下で手を打つと乾いた音が返ってくる「鳴龍天井」があるそうです。観光地としての活動を一切行っておらず、国重文といっても塔のような目立つものではないため、地元でも存在をあまり知られていないのは、何とももったいないことだと思います。足利尊氏ゆかりの寺
近くにある浄土寺と同じく足利尊氏ゆかりの寺です。前述のように本堂建立に際して尊氏の寄進を受けたと伝えられるほか、本尊の阿弥陀如来像は尊氏の持念仏で、陣中つねに持ち歩いていたものと伝えられています。古くからの信仰の場に必ずある巨石スポット
尾道では、玉の岩など多くの奇岩怪石がある千光寺、境内背後の山頂にタンク岩のある西國寺、境内背後に山麓から山頂まで累々と巨岩が連なる浄土寺と、古くからの信仰の場に必ずといって良いほど巨石・巨岩がありますが、ここ西郷寺にも、本堂裏の墓地に巨石があります。下部に五輪塔の浮き彫りがあるほか、頂上に小さな石祠が据えられており、やはり、ただの石というわけでなく、信仰の対象となっているようです。つくづく尾道は巨石信仰の街だなあと思わずにはいられません。■西郷寺
住所:広島県尾道市東久保町8-40
TEL:0848-37-2264
参拝時間:正月などを除き本堂の扉は閉まっており、ふだん参拝できません。
料金:境内無料
アクセス:JR尾道駅から徒歩40分。または、おのみちバス坊地口バス停下車、徒歩5分。
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