末梢動脈疾患の危険因子は、男性、高齢、糖尿病、喫煙、高血圧、脂質異常症、腎不全等々、思い当ることばかりです。(写真は高齢男性のイメージです。足病とは関係ありません)
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足調査でわかった足病変への対応
大浦武彦 日本下肢救済・足病学会理事長によると、日本では足病変の重症下肢虚血(CLI)治療の集学的治療のデータはなかったそうです。今回の「足病治療に関する患者・医師調査」が初めてのものです。ハイリスク患者の意識調査は(1)で説明しましたので、今回は下肢救済に関わる7診療科の医師750人の調査結果を紹介します。「治せる!足のきず 2月10日はフットケアの日」で記述したように糖尿病者の足潰瘍は、約50%が神経障害によるもの、約20%が血流障害、約30%が神経障害と血流障害を併せ持つケースです。
今回の調査は糖尿病の有無に関わらず、足の治らない創傷(潰瘍)や痛み、切断の主な原因である末梢動脈疾患(PAD)に対象が絞られていますが、欧米では静脈性の下肢潰瘍が全体の70%を占めるというデータもあり、糖尿病患者では両足にみられる多発神経障害によるものが多いので、問題はもっともっと広い範囲にわたっていることに留意してください。
医師調査の対象
糖尿病内科 100人
腎臓内科 100人
皮膚科 100人
循環器内科/循環器科 50人
血管外科/心臓血管外科 50人
形成外科 75人
整形外科 100人
■ 足病変ハイリスク患者に対し、定期的にフットケアを行なっている糖尿病内科・腎臓病内科は、ともに4割
糖尿病神経障害や末梢動脈疾患(PAD)による足病変ハイリスク患者に「定期的に予防的フットケアを行なっている」糖尿病内科の医師は38%、腎臓内科の医師は41%でした。
■ 足病変ハイリスク患者に対し、血流検査機器を使用していない医師は24.5%
全7診療科のうち、足の血流障害を調べるための検査機器を使用していない医師は24.5%でした。診療科別では皮膚科が最も使用しておらず71%でした。次いで整形外科36%、形成外科26.7%でした。血流の評価はぜったいに必要なのに……。
■ 足の潰瘍・壊疽に対する診断・治療アルゴリズムを設定しているのは全体の1割
重症下肢虚血(CLI)も発症要因として関わっている足の潰瘍・壊疽に対する診断・治療アルゴリズムを設定していると回答したのは全7診療科のうちわずか11.5%の医師だけでした。
■ 重症下肢虚血(CLI)の患者を他科・他施設へ紹介しない医師は1~2割
重症下肢虚血の患者を他科・他施設に紹介しない医師は、症状別では「安静時疼痛」22.8%、「小さな組織欠損」18.3%、「大きな組織欠損」8%でした。
■ 重要な重症下肢虚血(CLI)の治療法として"大切断"が上位3位に挙げられた
重要な重症下肢虚血の治療法として上位3位に足首から上の位置で足を切断する「大切断」を挙げた医師は全7診療科のうち37%でした。
■ 重要な重症下肢虚血(CLI)に治療法として"血行再建術"を1位に挙げた医師は51%
重要な重症下肢虚血の治療法として上位3位内に「血行再建術」を挙げた医師は全7診療科のうち89.4%、1位に「血行再建術」を挙げた医師は50.6%でした。
■ 重症下肢虚血(CLI)のために他科と連携を組んでいるのはわずか22.7%
末梢動脈疾患・重症下肢虚血の集学的治療のために、他科・他施設と連携を組んでいる医師は全7診療科ので27.7%、「連携を組んでおらず、紹介先もない」は12%でした。
■ 重症下肢虚血(CLI)のために他科と連携を組んでいない理由は「連携の仕方がわからない」が最も多く34.1%
集学的治療(チーム医療)のために、他科・他施設と連携を組んでいない理由として「連携の仕方がわからない」が最も多く34.1%、次いで「同院または近隣に連携すべき診療科が無いから」が28.3%でした。
以上の医師調査でわかったのは
・ 足病患者の窓口となる診療科が不明確
・ 予防的フットケアの実施率が4割程度とまだ不十分
・ 予防的フットケアの主な担当は看護師
・ 足病ハイリスク患者の既往歴の確認が不十分
・ 血流評価・治療の体制が不十分
・ 他科との連携が不十分
足病は「大切断」で治療が終るわけではありません。再び歩けるようになるまでは、長いリハビリや義肢、特殊な靴などのサポートが必要です。自分の足で最後まで歩きたいものです。
行政に働きかけて、足を切断から守るわかりやすい制度を作る必要がありますが、まず患者自身が徹底して自分の足を大切にしなければなりません。