今後は円高?それとも円安?ドル円相場の行方
日本株に大きな影響を与えるドル相場、今後は円高?それとも円安?
ところで、為替レートはどうやって決まるかと言えば、物価によってきまるのです。たとえば為替レートが、ある時1ドル=100円で、このときAジュースという缶ジュースが1本、米国では1ドル、日本では100円で売買されているとしましょう。その後、米国の物価が2倍になれば、Aジュースが米国では2ドルに値上がりします。しかし、米国での値段が2ドルに変わっても、Aジュースの中身は同じです。
変わったのは米ドル札の価値で、2分の1に減価されたのです。この時、日本側はインフレにならず、Aジュースが100円のままだとすれば、為替レートは必ず1ドル=50円に向かうよう長期には推移します。なぜなら、米国の物価が2倍になったのに、1ドル=100円ままであれば、100億円分の円が買われて日本でAジュースが1億本買われ、そのAジュースを米国で売って(1本は2ドルなので2億ドルになる)、その2億米ドルを売って(1ドル=100円なので)日本円を200億円買い、再度日本でAジュース買い・・・(以下同じことの繰り返し)ということが可能になり、大量の円買いとドル売りが発生して、円高ドル安になるわけです。
物価は通貨供給量で決まる
では、もう一歩踏み込んで、為替レートを決定する物価とは何で決まるかを考えてみましょう。こちらも結論から書きますと、通貨の供給量で決まります。通貨の供給量が増えれば物価が上がるのは、お金の価値が希薄化されるからです。全体で100しかお金が出回っていないところに、さらに100のお金が印刷されて市中に供給されれば、お金で取引される物の量・質が変わらなければ、最終的にお金の価値は半分になり、物の値段は倍になります。そして、日米の為替レートの7割は、両国に流通するマネー量(M2)で決まります。つまり、これまで徐々に円高になってきたのは、米国のマネー量が日本以上に増え、特に米国では金融危機以降に量的緩和策(いわゆるQE1-3)で急激に増えたことで、米ドルが希薄化されて価値が下がり、物価がその分だけ上昇し、円が相対的に上がったのです。
M2に大きく影響を与えるのが中央銀行が直接コントロールするマネタリーベース(中央銀行が発行する通貨=発行通貨と銀行が中央銀行に持つ当座預金残高)です。下図は2000年1月を1とした日米のマネタリーベースの推移比較ですが、米国のマネタリーベースが急激に増えていることがわかります。これでは円高になるのも当たり前です。
つまり、マネタリーベースを増やし、銀行の融資を緩和(融資を積極的に行うようにさせる)するかどうかによって物価が決まりますので、日銀の金融スタンスが緩和方向なのか、引き締め方向なのかで為替、ひいては株価が大きく影響されます。その意味でも、政府や日銀の金融政策に対する考え方が非常に重要になってきます。
現在のところ、自民党は緩和政策をとっており、日銀も緩和方向です(マネタリーベースは昨年末から増えている)。もちろん、自分勝手に緩和を行うと世界経済に大きな影響を与えてしまうので、好き勝手にはできません。
つまり各国のコンセンサスを取る必要があり、それには世界の盟主ともいうべき米国のお墨付きが必要になりますが、今のところ米国からは円安に対する非難の声が聞こえてきていません。これは日本で政権交代が起こったことに起因していると思われますが、それだけに、再び政権交代が起こるような事態にならなければ、しばらく円安基調には変わりがなく、日本の株価も堅調に推移すると予想できるところだと思います。
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