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太宰府天満宮でフィンランドデザイン

福岡・太宰府天満宮にて「フィンランド・テキスタイルアート~季節が織りなす光と影」が開催されています(3月10日まで)。境内のあちこちにマリメッコのファブリックを使ったインスタレーションも!展示の様子をレポートします。

江澤 香織

執筆者:江澤 香織

雑貨ガイド

福岡・太宰府天満宮に行ってまいりました!!
個人的には久々の九州ということで、ややテンション高め、写真多めです。2月は受験シーズン真っただ中のため、太宰府もこの通り。

すごい人出!!

すごい人出!!

とにかく人が多すぎて、お参りどころではありません。参拝にも長蛇の列。溢れかえっております。いつになったら御本殿に辿り着けるのやら。

そんな大賑わいの太宰府といえば学問の神様として、全国にその名が浸透していますが、実は「文芸・芸能・芸術の神様」としても古くから崇められているって知っていましたか? 太宰府の御祭神、菅原道真公は和歌もお得意だったようですし、和歌や連歌、歌舞伎、書画等の奉納を通じて、アートとも深い関わりを持っているのだそうです。そんなわけで、現代アートの発信拠点としても、様々な活動を行なっています。人々が行き交い集う場としての「開放性」と、1100年以上昔から変わらない天神信仰の場としての「固有性」という太宰府が持つ2つのキーワードを軸に、2006年より「太宰府天満宮アートプログラム」と題して、第一線で活躍中のアーティストを招き、太宰府内で作品の展示はもちろん、ワークショップ、トークショーなどを開催。アーティストの視点を通して、新しい太宰府の側面を浮かび上がらせています。第1回は日比野克彦さんのワールドカップをテーマにした展示で話題を呼びました。

赤い格子にポスターが似合ってる

赤い格子にポスターが似合ってる


そして今回のテーマはフィンランド!
「フィンランド・テキスタイルアート~季節が織りなす光と影」を開催。フィンランドのデザイン・芸術の中でも自然と関わりの色濃さを感じることのできるテキスタイルに焦点を当て、フィンランドと日本の自然とデザインの密接な関係にスポットを当てる、とのこと。

宝物殿です

宝物殿です


メインの展示室は宝物殿。ここは道真公にまつわる宝物、古文書や美術工芸品等約5万点の文化財を収蔵・展示しており、太宰府の成り立ちや天神信仰の歴史に関するビデオ上映も行なっています。それらの展示品と融合してフィンランドテキスタイルを展示してしまおう、という斬新な企画! 入口にはフィンランドの代表的ブランド、marimekko(マリメッコ)ののぼりがヒラヒラ~。

牛の木彫りの上にはマリメッコ

牛の木彫りの上にはマリメッコ


入ってすぐ、またびっくり。菅原道真公とゆかりの深い牛の彫り物の上に、堂々とマリメッコテキスタイルが下がっております(道真公は牛年生まれで牛年に亡くなり、牛車でご遺体を運び、その牛が自然に止まったという現在の太宰府の地に埋葬された)。最初からこうだったんじゃないかと思うほど違和感なく馴染んでいるのですが…。この御神牛は、博多人形師の中村神喬氏により、太宰府天満宮御神忌千百年大祭時に制作・献上されました。テキスタイルの作家はMiina Akkijyrkka(ミーナ・アルキユッカ)。牛をテーマにスケッチやペインティング、彫刻などの作品を手掛けるアーティストで、どうやら自分でも牛を飼っているらしい。リアルな躍動感があると同時に、牛に対する愛情が感じられ、どこかユーモラスさも漂わせています。国宝級の人形師とフィンランドのアーティストによるコラボ! あまりにしっくりと馴染むので、期間終了後もこのまま展示を継続することになったそうです。

第2展示室では、フィンランドテキスタイルと収蔵品を合わせて展示。これまたドラマティックな展示スタイルなのですが、実際に見て楽しんでいただきたいので、写真は割愛します。ここには大祭などで着られる神職の衣装も展示されていて、通常は神事に遠くでしか観ることのできない衣装に施された布の模様を間近で見ることができ、テキスタイルデザインとしての美しさにハッとさせられたりします。フィンランドデザインという新しい要素を加えることによって、今まで知らなかったり気付かなかったりしていた日本文化に思いがけず目を向けるような仕掛けが施されているように感じました。

迫力の展示風景

迫力の展示風景


第3展示室は60、70年代を中心としたフィンランド・ヴィンテージ・テキスタイルがどーんと下がり圧巻。向かってまっすぐ正面がDora Jung(ドラ・ユング)、右側が石本藤雄、左がMaija Isola(マイヤ・イソラ)(※各アーティストの詳細は太宰府のHPにて)。ドラ・ユングにおいては日本初公開で、今回の展示の企画を行なったbiotope(ビオトープ)築地雅人氏のイチオシ。築地さんといえば、現在は外苑前でdoinel(ドワネル)というビオワインと雑貨の店を運営していますが、元々学芸大学で北欧雑貨の店と卸をやっており、北欧デザインの歴史的背景にも造詣の深い人です。ドラ・ユングの作品が収蔵されているフィンランドの美術館に直接交渉し、展示の許可が降りたのだそうです。少し厚手でダークトーンの織りの作品などが展示され、フィンランドの日常を垣間見るような自然の風景や身近な動植物がモチーフになっています。現在の日本のテーブルに置いても馴染みやすく親しみやすい、素敵なデザインが多かったです。これらは現地でじっくりご鑑賞ください。

お土産も見逃せません

お土産も見逃せません


エントランスにはポップアップショップも開設されており、復刻されたドラ・ユングのデイジー模様のランチョンマットや、福岡在住のアーティスト・鹿児島陸さんのハンカチなど、魅力的な品揃え。鹿児島さんは太宰府をテーマにした梅や牛などのイラストを用いたオリジナル皿も制作しています。

さて、フィンランドテキスタイルは境内のあちこちにも展示されています。宝物殿室内は、長くて暗い夜が続くフィンランドの「影」の部分を表現し、ややダークトーンの重い色彩が多かったのですが、境内はポップで明るい印象のファブリックを用い、「光」を表現しています。

文書館、情緒ある建物です

文書館、情緒ある建物です


インスタレーションを手掛けたのは、世界各地のマリメッコの店舗デザインなども手掛ける、インテリアデザイナー・ima(イマ)の小林恭さん、マナさん。店舗デザイン時もその土地土地の特徴や背景を生かして、空間に反映させるそうですが、今回も太宰府の歴史的背景や境内の特徴、自然環境等をきちんと理解した上で、建物の趣や植えられた植物など、神社ならではの独特の空間を生かしながら、マリメッコのプリントファブリックを展示しています。

ゆっくりしたい場所

ゆっくりしたい場所


このときは宝物殿の隣りにある文書館も公開されていました(2月24日(日)まで)。1901年に建てられた入母屋造の木造建築で、2002年に改修されています。靴を脱いで中に入ると畳の大広間があり、その先の二つの床の間に、掛け軸のごとくマリメッコがそれぞれどーんと下がっています。これが思いのほか、空間にぴったりマッチしています。なんとも不思議で斬新な光景ですが、日本の伝統建築は自然と融合したものが多く、ややグラフィカルな側面もあり、それがフィンランドデザインと共通した感覚なのかもしれません。日本も北欧も、幅広く大らかにアートを受け入れる寛容さのようなものも感じます。写真のようにちょこんと座って、しばらくじっくり展示を眺めながら空間を楽しむ訪問者が多かったように思います。

100年前のシャンデリアだそう。ユニークな建物です

100年前のシャンデリアだそう。ユニークな建物です


さらに太宰府入ってすぐ右脇、総合案内所の裏にあるのでちょっと分かりずらいですが、浮殿という小さな建物の中を格子越しに覗いて見ると…また不思議な動物オブジェが現れます。

麒麟を表現しているのだとか

麒麟を表現しているのだとか

マリメッコの代表柄でもあるUnikko(ウニッコ・ケシの花)で包まれた、牧歌的な可愛らしさを感じさせる動物オブジェ。夜間にはライトアップもされるそう。こちらは境内にある銅像、麒麟(中国の伝説上の動物)を表したもので…しかし花柄になっちゃうんだからすごい。imaによると、麒麟像の背中の模様から、このウニッコ柄のイメージが湧いたそうで、なんともユニーク。神聖でちょっと怖いイメージもある麒麟ですが、こうすると凛々しさを漂わせつつも穏やかでほのぼのとした印象です。境内の麒麟像と見比べてみるのもいいでしょう。携帯カメラで激写している女性が多かったのはこのスポットでした。

さらに参道にもマリメッコのバナーがずらりと掛かっています。ここまでやってしまう太宰府の懐の深さとアートやデザインへの関心の強さに、ああ、やられたー!と改めて惹き込まれてしまいます。今後の展開にも大きな期待を持てそうですね。こちらの展示は3月10日(日)までなので、興味のある方はぜひお急ぎを!


◆フィンランド・テキスタイルアート~季節が織りなす光と影◆

2012年12月1日(土)~2013年3月10日(日)
会場:太宰府天満宮宝物殿企画展示室・境内
宝物殿開館時間 9:00~16:30(入館は16:00まで)
観覧料 一般400円、高大生200円、小中生100円
(30名以上の団体客、障害者手帳掲示より付添者1名まで半額料金)
http://www.dazaifutenmangu.or.jp/finlandtextileart/


焼きたてをすぐさまパクリしましょう

焼きたてをすぐさまパクリしましょう


さて、作品鑑賞後はせっかく太宰府まで来たのでお土産を。太宰府2大土産は、まず「梅ヶ枝餅」。そして「木ウソ」と呼ばれる鳥の木彫り人形。参道を歩くとあちこちで売っています。梅ヶ枝餅は、小豆餡を餅生地でくるんで梅の刻印の付いた鉄板で焼いたもので、表面はサクサク、中からホカホカのあんこ。お餅なので、焼きたてを買ってそのまま頬張るのが一番美味しいかも。1個100円などで売っています。たくさん店があるので、各店を食べ比べしても楽しい。

この人形、妙にハマる・・・

この人形、妙にハマる・・・

鷽(ウソ)は境内に銅像もあり、きれいな声で鳴く小鳥だそうですが、天満宮の1月7日に行われる「うそかえ」神事に用いられるもので、幸運の守り神として親しまれています。1年中のウソを神前で誠に変えて罪を滅ぼすというもので、なんとも憎めないひょうきんな風貌をしています。頭の後ろにあるくるくると木を削った部分は羽根を表現しているようなのですが、カールパーマの不機嫌な子供みたいなちょっとヘッポコな顔つきに、妙に愛嬌があります。こちらも参道を歩くと、様々な大きさのものが売られています。

小躍りしたくなるような鹿児島さんのアトリエ

小躍りしたくなるような鹿児島さんのアトリエ

今回、偶然のめぐり逢いで、太宰府のポップアップショップで作品販売もされていた、鹿児島陸さんのアトリエにも伺うことができました。しかもアトリエを訪ねると、なんとインスタレーションを手がけたimaの小林夫妻も同席!! 展示を観たすぐ後だったので、まさかご本人と直接お会いできるとは夢にも思っておらず、大興奮のあまり「素敵でした!」とありきたりの感想しか述べられないマヌケっぷりで過ごしてしまいました。しかも鹿児島さんのアトリエがあまりにも素敵すぎる空間。ということでサービスショットを掲載します。鳥や花など自然のモチーフをイラストとして施し、物語性のある陶器やファブリックなどの作品が人気の作家です。3月には新宿伊勢丹のイベント「新宿乙女雑貨店」(後半の3月13日~26日)に参加が予定されているそうです。
予想外に濃密で人の出会いが多かった、充実の福岡旅となりました。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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