「勉強しなさい」と言われてもやる気は出ない
子どものやる気をなくさせる最強の言葉は「勉強しなさい」
「勉強しなさい」と親に言われても、たいていの子は、ふてくされるか、あるいは勉強するとしてもしぶしぶやるだけです。一方で、自ら進んで勉強する子は、そもそも「勉強しなさい」と言われる前に、自ら進んで勉強します。
というわけで、理屈の上からも経験の上からも、「勉強しなさい」という言葉は、子どもに勉強させる上で、ほとんど効果がないということがわかります。にもかかわらず、なぜ「勉強しなさい」というセリフが後を絶たないのでしょうか。
育児書や教育書でたいていとりあげられているのが、「ほめること」の重要性です。確かに「ほめること」は重要です。それにもかかわらず、実際には、「ほめること」よりも「勉強しなさい」といった言葉がよく使われます。
行動科学を活かそう
これは、具体的に「どうほめたらよいのか」ということまで、浸透していないからだと思われます。今回は、行動科学の知見を元に、「どうほめたらよいか」について紹介したいと思います。行動科学で大切なことは、まず、「行動」に着目することです。そこで、クイズです。次のうち、行動科学で言うところの「行動」にあてはまるのはどれでしょうか。
・しっかり勉強をする
・部屋をきれいにする
・礼儀正しくする
・コミュニケーションを大切にする
正解は、どれも「行動」にはあてはまりません。「えーっ」と思われるかもしれませんが、行動科学で言うところの「行動」とは、具体的に何をどうすればよいのかがわかるものでなければなりません。
例えば、「部屋をきれいにする」の「きれい」を例にとってみましょう。汚れやほこりをふき取り衛生面で「きれい」にするのか、あるいは、ものを整理整頓して見た目を「きれい」にするのか、はたまた、ものを片づけてきれいさっぱりという意味の「きれい」にするのか、人によって基準が異なります。
「礼儀正しい」というのは、ある行動をした結果のことであり、どういう行動をすると「礼儀正しい」と言えるでしょうか。こう考えてみると、私たちが普段何気なく「行動」と思っていることが、そうではないことがわかります。
同様に、「しっかり勉強する」の「しっかり」を考えてみましょう。「しっかり」が、毎日コツコツ勉強するという行動を指しているのか、得意な分野と苦手な分野をはっきりさせて、得意な分野を伸ばしながら苦手な分野を重点的に勉強するという行動を指しているのか、学校や塾の宿題をやるという行動を指しているのか、いったいどれなのかわかりませんね。
自分で進んで勉強しない子は、勉強が好きか嫌いかということを抜きにしても、たいていの場合は、「何をどう勉強したらよいか」という具体的な「行動」がわからないのです。
「受験生なんだから、しっかり勉強しなさい」と言われても、本人にとってみれば「ちゃんとやっているのに、なんでそんなこと言われなきゃいけないの!」ということにもなりかねませんね。