ニッポンの不妊の実態
2012年6月に放映されたNHKスペシャル「産みたいのに産めない~卵子老化の衝撃~」では、年齢と共に「卵子は老化する」「不妊原因の半分は男性側」と言う警鐘を鳴らして、大きな話題となりました。不妊の検査や治療を受けたことのある夫婦は、6組に1組。不妊治療専門のクリニックが世界一多く、体外受精の実施数も世界一という不妊大国ニッポン。女性の就業事情やライフスタイル、子育て事情が変わってきているのに子づくりや子育てに対する意識が変わっていないというギャップが、その原因ではないかと私は考えています。
かつての「夫は外で働き、妻は家で家事と子育て」という構図はもはや家族のデフォルトではありません。女性でもキャリアを追求したいという方、あるいはだんな様の収入だけでは家計を支えられないためやむを得ず働くという方など、様々な理由で仕事を持つ女性が増えています。その一方で子育てを地域で支える仕組みは失われつつあるのに、男性の育児参加も進んでおらず、育児は相変わらず女性がその大半を背負わざるを得ません。「子どもができて一人前」的な古い価値観も依然として世間に存在しています。また、以前「赤ちゃんを作りたい夫婦に伝えたい精子のお話」でご紹介したように、不妊の原因は妻にあると考え、不妊治療に後ろ向きな男性も決して少なくありません。そんな、世帯の収入、女性のキャリア、古い価値観、男性のプライドなどの社会的・歴史的な背景と生物学的な「出産の限界」のせめぎあいが、今の「産みたくても産めない」状況を生み出しているのではないでしょうか。
子づくりについてちゃんと話し合っていますか?
このような現状を打破するには、自分の人生、または夫婦の将来に「子どもが必要かどうか」をしっかり考え、計画を立てる必要があると思います。20代前半で結婚をし、経済的に何の不自由もないのなら、「子どもはさずかりもの」「自然にまかせて」とのんびり構えていてもいいかもしれません。
しかし、2010年の女性の平均初婚年齢は28.8歳、第1子出生時の年齢は29.9歳です。一方で前述のNHKスペシャルのなかでは「不妊の9割は卵子の老化が原因」「体外受精の成功率は35歳で16%程度」「40を過ぎたら基本あきらめてください」という医師のコメントが紹介されています。35歳になって「子どもをどうしよう」と夫婦で話し合うのでは、すでに遅いのです。30歳の時点で自分たちの将来に子どもが必要かどうか、ぜひ夫婦でしっかり話し合ってみることをお勧めします。
子づくりの話題はすなわち性の話題、夫婦のセックスの話題に直結しています。子づくりを意識することはすなわち自分たち夫婦の性生活について意識し、話し合うことなのです。私は常々、夫婦間でセックスの話題をタブーにしないよう、いろいろな場所で訴えています。夫婦間で性の話題のない家庭はセックスレスにつながりやすく、それはそのまま「産めない」状況にもつながります。夫婦の間のセックスを見つめ直すことが、子づくり、子育てを考える第一歩なのです。
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