短期公社債投信は一時は購入するのも大変であった人気商品
一時期は預貯金の代わりに人気を集めたが……
短期公社債投信、正式名称を「短期決算型公社債投資信託」と呼んでいましたが、漢字の羅列で難しい商品と思われることを防ぐために、愛称をつけて販売されていました。冒頭の「チャンス」は日興証券(現、SMBC日興証券)、「アタック」は大和証券、「ホープ」は国際証券(現、三菱UFJモルガンスタンレー証券)などというようにです(挙げた証券会社は主力販売会社として)。
購入は1万円以上1円単位で行うことができ、決算期間(預入期間)は3カ月、6カ月、1年の3種類となっていましたが、主流は3カ月決算型でした。大和証券が販売していた「アタック」の場合は、名称の後に来る「スリー」、「シックス」は決算期間を指していました。原則、中途解約をすることは出来なく、申し出(決算時点で出金)をしない限り自動継続扱いになっていました。
公社債投資信託の1種なので、収益は運用実績に応じる形で行われていましたが、その成績は常に預貯金を上回っていました。現在、唯一運用が行われている国際投信投資顧問の「ホープ」の1月に償還を迎えたものの実績(3カ月)は、年率換算で約0.12%でした。
ネット銀行の定期預金には負けるところもありますが、大手銀行などの既存の銀行の預金金利には負けたことはなかったと記憶しています。
今でこそ、ネット銀行は当たり前の預け入れ先になっていますが、短期公社債投信が隆盛を極めた1990年代半ばから後半にはネット銀行は存在していませんでした。たとえば、ソニー銀行が営業を開始したのは2001年6月ですから、90年代の後半は預金・貯金の代替商品として独り勝ち状態という時期すらあったのです。
元本割れが転機となり順次償還の憂き目にあう
独り勝ち状態であった短期公社債投信に転機が訪れたのは、元本割れを起こしてしまった運用会社が現れたからです。隆盛を誇っていたのは、運用成績がよかったことと元本割れをしていなかったことでした。ところが、2001年に米国のエネルギー会社であるエンロン社が破綻したことから、エンロン社の債券を運用対象に組み入れていた短期公社債投信のいくつかが元本割れを起こしてしまったのです。余談ですが、MMFのいくつかも同時期に元本割れを起こしてしまいました。さらに、2001年といえばネット証券が産声を上げた時と重なったのです。預貯金の延長と考えて利用されていたのですから、潮が引くように急速に人気に陰りが出てきて、また元本割れをしないまでも、運用環境の悪化により高い運用成績を出しにくくなり、預金金利との差が小さくなってきたことも人気離散の原因と思われます。
こうしたことから、一世を風靡した短期公社債投信も国際投信投資顧問が運用する「ホープ」だけが残っていたのですが、そのホープも平成25年1月から順次償還。同年3月のホープ3号の償還を持って全ての短期公社債投信の運用が終了することになります。
一時期は、筆者も預金・貯金代わりに利用していたことがあるため、短期公社債投信が全て償還されることには感慨深いものがあります。同時に、短期公社債投信のような商品を作れば、かなりの資金を集めることが出来るような気がしますが……。運用環境が厳しいので無理なのかもしれませんね。
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