外観デザインが周囲との軋轢の原因に?
外観デザインの問題は、単に個人の住宅への愛着にとどまりません。少し前に、こんなニュースがあったのを皆さんは覚えていらっしゃらないでしょうか。それは、ある漫画家が東京都内で建てた奇抜なデザインの住宅を巡るお話です。その漫画家が建てた住宅の外観デザインは赤と白のシマシマ模様。彼は普段着もそのデザインにするくらい、そのデザインにこだわりを持っていました。しかしそこは高級住宅街。周辺住民から、景観を損なうとして訴えられたのでした。
結局、裁判ではその漫画家が勝訴して、今現在、赤と白のシマシマ模様の住宅が建っているとのことです。しかし、この話から見えてくるのは、その善し悪しは別として、住宅の外観を一つ誤るだけで周囲の人たちとのあつれきを生みかねないということです。
ですから、外観デザインは結構、大切な要素といえるわけです。もちろん、住宅は個人が建てるものですから、こだわりを反映するものであって構わないのですが、それだけではなく周囲の景観、街なみとの調和を大切にすることも重要だといえます。
さて、誰もが「かっこいい住宅」「素敵な住まい」に住みたいと思うものです。その「かっこいい」や「素敵」ということは外観イメージが大きな部分を占めるのではないでしょうか。その外観イメージを決める要素として大きなものが外壁材と呼ばれるものです。
モルタル外壁とサイディング外壁について
では、外壁材にはどのようなものがあるかというと、大きくモルタル外壁とサイディング外壁の2種類に分かれます。モルタルとは、コンクリートと砂、水を合わせたもので、それをラスと呼ばれる下地材に左官職人が手塗りで施工するものです。古くから、日本の住まいづくりでは一般的なものでした。モルタル外壁は手塗りのため、手作り感や本物感があるデザインが期待できますが、その一方でヒビや割れの発生などの施工品質や精度が均一でなりにくいという面があります。要は、職人さんの腕次第で完成度が決まってしまうという部分があるのです。ただ、最近は吹き付け施工など、技術的にも進化しています。
一方、サイディングとはあらかじめ外壁部材メーカーの工場で加工、製造された外壁板のこと。同じく下地材の上に、それを貼り合わせて外観を形成する工事を行います。工場で製造されたものですから、品質や性能、施工性が高いという特徴があります。
種類としては、単に表面をレンガ柄などに印刷した単調な柄のものから、自然の風合いを取り入れた複雑な柄のものまで多種多様です。このほか、タイルを貼り付けたタイプ、10cm以上の厚みがあるコンクリート系の素材もあり、これらも広い意味でサイディングの部類に入ると思います。
モルタルであれサイディングであれ、品質や性能、デザイン性によってコストは様々です。そして現在の住まいづくりではこれらのいずれか、あるいは両方を張り分けることで、外観を形成することになります。また、汚れが落ちやすい塗料を塗るなど、従来より外壁の美しさを保つ技術の導入も進んでいます。
外壁材は省エネルギー性能や遮音性能という、居住空間の快適性を保つ上で重要な住宅部材でもあります。そのため、立地などを考慮し、安全性の点からも外壁素材を検討することも住宅づくりでは大切になります。
ところで、戦後、様々なハウスメーカーや工務店が誕生し、住宅づくりが「産業」となっり、その過程で各社が競争を繰り返してきたわけですが、その歴史は外壁競争、あるいは外観競争という側面がありました。そして、今もそれは継続中です。次のページでは、ハウスメーカーの外壁を中心に外観デザインについて考えていきます。