材料がわかる料理(写真はボルシチ)はカーブカウンティングが容易ですが、加工度が高くなるとまず不可能です。でも、初めての料理でも自分が食べなれている量を守れば、炭水化物を怖がることはありません
もちろん、どちらも炭水化物(carbohydrate)の省略ですが、この場合はカーブカウンティング(carb counting)が世界中で使われていますから、私はカーブ(carb)と書くようにしています。
もう一つ、carbを「炭水化物」とするか「糖質」にするかも悩みの種です。食品学や栄養表示基準では「炭水化物から非消化性の食物繊維を除いたもの」、つまり消化吸収できる炭水化物を「糖質」としていますが、全く別の解釈もあるのです。日本糖質学会の「糖質」はもっともっと広い意味で使われています。
例えば関節痛のある高齢者のサプリとして、グルコサミンとかコンドロイチン、ヒアルロン酸の名前をよく耳にしますが、実はこれらは6炭糖にアミノ基(窒素)がついたムコ多糖で、糖質サプリメントなのです。グルコサミンで血糖値が上がることが米国で話題になったことがあります。これらは炭素、酸素、水素からできている狭義の炭水化物から逸脱していますが、いろいろな基を持った糖類は生物にとって非常に大切なものなので、炭水化物も含めてもっと広義の糖類の呼び方として「糖質」を使うようになった経緯があるのです。これを踏まえて、単糖からオリゴ糖までを糖、それ以上を糖質という解釈もあります。
こんなこと知らない方が気が楽なのですが、当サイトでことさらに炭水化物(糖質)と書く場合は狭義の栄養表示の糖質を意味しているとご理解ください。
カーブカウンティングで食事プランをより柔軟に!
糖尿病の食事療法のメソッドとしては食品交換表など幾つかありますが、カーブカウンティングは米国ではとても一般的なもので、食事とインスリン投与を状況に応じて柔軟に変更できる、実生活向きの方法です。特にインスリンマルチショットの1型/2型糖尿病者には1800ルール・500ルールと組み合わせることによって血糖コントロールを容易にしてくれる心強い手段です。それほど厳しく炭水化物(糖質)摂取を制限しなくてもいい2型糖尿病者は、血糖のもととなる炭水化物食品の果物、野菜、ジュース、穀物(ご飯、パン、パスタ、めん類、シリアル)、牛乳、砂糖、スイーツに気を配るだけでも、とても食生活が楽になります。
食事の炭水化物をグラム単位でカウントするのは専門知識がないと出来ませんが、糖尿病食事療法で指導されている食品交換表を使えば一応の計算はできます。
食品分類表の炭水化物 1単位(80kcal)あたりの平均含有量
表1 穀物、いも、豆(大豆を除く) 18g
炭水化物の多い野菜と種実
表2 くだもの 20g
表4 牛乳と乳製品(チーズを除く) 6g
表6 野菜(炭水化物の多い野菜を除く) 13g
海藻、きのこ、こんにゃく
表3(肉、魚)と表5(油脂)には炭水化物はありません。日本の食品交換表はカロリー重視の80kcalで揃えてありますから、上記のように炭水化物の含有量は各分類でばらばらです。米国の食品交換表では穀物とくだものが1サービングあたり15g、野菜が5g、牛乳が12g(タンパク質が8gあるので、牛乳の炭水化物換算は1サービング、15gで計算)と簡単にまとまっていますから、カーブカウンティングにそのまま利用できます。
さて、これさえ分かればカーブカウンティングは出来ると思いますか? 2型糖尿病ならアバウトでいいのですが、インスリンマルチショットと適応させるカーブカウンティングでは─特に1型糖尿病では─もっと精度が求められます。次のような訓練を積み重ねてカーブカウンティングを習得しましょう。
よりよいカーブカウンティングのために
■ 目分量と手の感覚で炭水化物食品の相当量を会得するまでなるべく計量をする。また、定期的にそれを確認すること
■ 血糖自己測定の時刻と結果を記録する
■ 食事、間食の時刻とカーブカウンティングをグラム単位で記録する
■ 糖尿病治療薬の種類と量、投与時刻を記録する
■ エクササイズの種類や強度、時間を記録する
■ 血糖値に影響する病気やストレス、過労などを記録する
毎日の食卓で食べるものは、多くの食材で作られていて、簡単にカーブカウンティングができない料理がたくさんあります。難しい料理は管理栄養士に相談しましょう。
また、炭水化物だけに焦点を合わせる習慣がつくと、肉などの高タンパク質、高脂肪、高カロリーの料理が増えてしまいます。糖尿病者や糖尿病予備群の人は決してこれらの料理がフリーパスでないことをお忘れないように。