台所に温かさを感じる林芙美子の「終の棲家」
「放浪記」でおなじみの女流作家、林芙美子。「放浪記」は、作者が女学校を卒業後、18歳で尾道から東京へ上京してからの5年間の彼女自身の日記です。幼い頃は行商をしながら木賃宿で暮らし、各地を転々とする日々。故郷を持たないと言っていた林芙美子が、終の棲家として定めた地が、新宿区中井です。そこには昭和26年に林芙美子が48歳で亡くなるその日までの10年間暮らしていた家があります。現在では林芙美子記念館という形で新宿区が管理し一般公開されています。
昭和16年に完成した数寄屋造りの日本家屋は山口文象の設計によるもので、戦時中の建坪に制限があったため、林芙美子本人名義の生活棟と、画家であった夫の禄敏名義のアトリエの2棟をつなぎあわせた造りになっています。この書斎からいくつのも名作が生まれました。
展示室と生まれ変わった夫の禄敏のかつてのアトリエには、ここでしか見ることのできない数々の遺品が惜しみなく展示され、年に4回ほど展示替えを行っています。
設計において、「東西南北風の吹きぬける家で、客間には金をかけない事と、茶の間と風呂と厠と台所には十二分に金をかける事」という信念を持っていたそうです。館内のどの部屋よりも台所に温かさを感じる理由がよくわかります。
■新宿区立林芙美子記念館
場所:東京都新宿区中井2-20-1
TEL:03-5996-9207
開館時間:10:00~16:30(16:00までの入館)
休館日:月曜日(月曜日が休日にあたるときはその翌日)、年末・年始(12月29日~1月3日)
入館料:一般150円、小・中学生50円
アクセス:都営地下鉄大江戸線・西武新宿線「中井」より徒歩7分
ホームページ:新宿未来創造財団